●2002.4月● 仕事に意義が感じられない
編集プロダクションで情報誌の制作に携わっています。年齢のせいもあるのでしょうが、最近、なぜか"私はあまり世の中の役に立っていない"と感じ始めてしまいました。職場では責任ある仕事を任されてはいますが、作っている雑誌自体は使い捨て情報をただ流しているだけのようなもの。"結婚しない"という強い意志があるわけでもないのに、ズルズルと独身のままです。未来へのビジョンもなく、今後の自分の姿を考えるのが怖いです。今井さんは俳優という仕事に疑問を感じた瞬間はありますか? 将来に不安を感じたことがありますか?
(33歳 マスコミ・広告 女)

●今井雅之のアドバイス●
「職場のリーダーとして自信がない」と書いてきてくれた前回の相談者が、その後の報告を投稿してくれました。張り切るあまり狭い考えにがんじがらめになって、まわりの動向ばっかりが気になってたんやね。そう、「自分はどうしたいか」、これが大事。そのことを知って、前進してるようで、ホッとしました。報告、サンキューでした!

さて、今回の相談者、よう訊いてくれました! 特に40歳を過ぎた今、将来に対する不安はない半面、毎日が不安なんですよ。僕の職業は会社員のみなさんとは違って生活の保証がなく、考え方によっては毎日がリストラ状態ともいえるからね。それから、俳優という仕事に疑問を感じたことはないけど、実力だけでなく人気も大いに影響する芸能界には疑問がいっぱい。ノーテンキに見えて、逆にあなたに悩みを聞いてもらいたいくらいの不安定な気持ちで暮らしてるんです。

そう、あなたの思ってることはそのまま僕の想いと重なってます。僕もね、ふとしたときに"世の中の役に立ってへんのとちゃうか?"という不安にかられることがあります。そもそも僕の仕事は大きく2つに分けられると思う。ライフワークである舞台の仕事と、テレビや雑誌に出るマスコミの仕事。特攻隊員たちの青春を描いた舞台『THE WINDS OF GOD』は十数年間コツコツと続け、大きくしてきました。ロサンゼルス、ニューヨーク、ハワイ、ロンドンでの公演も叶ったしね。その点から見れば成功したのかもしれへんけど、いっつも借金だらけやし、見向きもされず惨めな想いをしたこともある。一方、マスコミの仕事に関して「プライドをもってやってる?」と聞かれれば「NO!」と答えざるをえない。本音をいえば僕の場合、甘っちょろく思えてしまうテレビドラマは役者としては不完全燃焼で終わってしまうんですよ。バラエティ番組にはそれこそ垂れ流しのようなむなしさがつきまとうしね。それよりは、注目はされなかったかもしれないけど、ヘタクソな英語を駆使してハワイの真珠湾の近くで『WINDS』を上演してた時の方がやり甲斐はあったよ。"人生をかけてる"っていう実感もあった。

『WINDS』は唯一の僕の信念。細い糸ですけどね。続けたい、ただそれだけのために頑張ってるというのが実情。だけど、残念なことに『WINDS』ではメシは食っていけない。だからテレビにも出てるわけで、決してアイドルの脇を固めるために僕は役者をやってるわけじゃない。これって僕にとってはとてつもなく大きなジレンマですよ。

けどね、最終的に僕にはライフワークともいえる『WINDS』があるからやってられるんやと思う。したがってあなたも、どんなに小さなことでもいいから、心から自分がやりたいと思える仕事を見つけてください。金にもならんし会社の仕事の合い間にしか時間をさけないかもしれへんけど、それを将来大きくしていくんだと決意できるようなことを。それさえあれば、そのための手段と割り切って会社の仕事も続けられるでしょ? 夢があるからやってられる。夢のために"ズルズル"ではなくて"あえて"やってる。それでもいいじゃん? 同じようなことでつまずいてる人はいっぱいいるんじゃないかな。お互い頑張ろうぜ!