立秋過ぎても暑い日が続いてますが、体調を崩してませんか?
さて、今月の相談に関する僕の見解を端的に言いましょう、大学は卒業しなさい! 舞台衣装を手がけられる商業演劇の現場では憧れのスター俳優に会えるし、その華やかさと比べれば大学は確かに地味でしょう。大学で養成する「商業的なデザイナー」というのはアパレルメーカーやブティックに勤めるデザイナーを指すんでしょうからね。
でも、大学で身につくファッションの知識は、絶対に無駄にはならないと思いますよ。舞台映えする色づかいを理論的に学べたりしてね。それに、在籍してれば、広い意味で同業を目指す仲間たちとの情報交換ができるし、新しい情報は黙ってても入ってくるから、ソンはしないよ。
ふーむ……「もうドロップアウトしたくない」とありますねぇ。実は僕も大学をドロップアウトしそうになったことがあるんですよ。当時は法政大学に通いながら演劇の勉強もしてた。ところがですね、舞台出演が決まったはいいけど、卒業試験のスケジュールがモロ重なってしもた。演劇の道に反対してたオヤジに対して意地でも卒業はしたい。でも舞台出演は役者として大きなチャンス、絶対に逃したくない。考えあぐねましたよ。そこで、思いきってゼミの教授に相談しに行った。事情を説明して、「なんとか試験を別の日にしていただけませんか」と頼むと、教授の答えは「気持ちはわかるが、無理だなぁ。前例をつくれないから」。ガーーン! 卒業試験か舞台か、究極の選択! 当時の僕にとっては、人生最大の岐路や。
けどね、相談者さん。欲張りでも一生懸命に目標をめざして頑張っていれば、女神は微笑むんですよ。まだ少し学生運動の余波が残っていた当時、なんと卒業試験は急きょレポート形式に変更されたんです。レポートなら自分でスケジュールを組み立てて好きな時に書ける! 舞台の稽古もできる!! で、けっきょく大学をドロップアウトすることなく、卒業証書も舞台出演のチャンスも手に入れることができたんです。
あなたの場合、舞台衣装に関心を持った動機がようわからんけど、たぶん何か舞台衣装に関するアルバイトの話が舞い込んだんやろな。だとしたら、現場の雰囲気に舞い上がる気持ちもわからんではない。そりゃエキサイティングですよ。でもね、現場は人手が足りないという現実もあると思う。ベテランを雇うとギャラが高くつくから「ちょっと手伝ってよ」という程度の軽い気持ちで声がかかった可能性もあるよね。そのへんは冷静に判断するように。そして、その種の仕事は大学と並行してすることを僕は勧めます。
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