●2004.5月● 持つべきものは友
 
5月2日(日)

ブルックリンにあるプロスペクトパークで開かれている桜祭りへ行く。この週末がNYの桜のピーク第2弾で、公園内の桜のプロムナードはまさに満開。気持ちのいいお天気だし、まさにお花見日和。八重桜のような花がぼってり咲き誇った濃い目のピンクの花の下でお弁当を食べた。私はベジタリアンロールにしたのであまりブレはなかったけど、友達が買った弁当は「テリヤキ弁当」として売っていたのに、鶏肉とシラタキを炒めたものしか入っていない奇妙キテレツなものでびっくり。そばにいた見知らぬ日本人たちも、口々にこの弁当のお粗末さに不満をもらしていた。

弁当を食べながら、日本人、アメリカ人の友達と「郷愁」という観念について話す。アメリカ人には日本人が持っているような「郷愁」という感覚は存在しないと、ある本で読んだことがあった。アメリカ人の友達は、確かにそのようなものをあまり感じないと話していた。なんでも彼のご両親は会社をリタイアしたあと、住んでいた家を売ってそのお金でキャンピングカーを買い、他の夫婦とともに数台でアメリカを旅し続けているとのこと。なので彼に実家はない。最初に聞いたときはエラく驚いたが「郷愁」がないことを考えると納得がいくような気もしてきた。

 
 
5月3日(月)

会社のボスのグラディスとCo-Workerのヘンリーが、よく仕事中に「部長」と言っている。「スシ」「フトン」に続き、とうとう役職名まで日本語のまま言うようになったか…と勝手に想像していたら「ブチョウ」じゃなくて「Puccio」という人の名前だったことが判明。そりゃそうだよね、課長とか社長とかは言わないのに、いきなり「部長」だけ呼ぶわけないよね。

それはそうと今朝会社の向かいの立体駐車場の3F部分が落下して、下に停まっていた数台の車が無残にもグシャグシャになった。ジャガーやBMWなど高級車ばかりなので余計に痛々しかった。そういえばずいぶん錆びて古い感じの鉄筋の骨組みだったから、壊れても不思議じゃないけど。驚いたのは、つぶれた車の保証をするのは駐車場サイドではなくて、車の持ち主個人が入っている保険からだということ。びっくり

週に1度くらい、職場に営業コール業務をするために女性がやってくるようになった。今日来た女性はマリアンといって、ロングアイランドから通っているという。駅はどこか聞いたら、「マサピクワ」だって。知ってる〜!! マサピクワといえば、メグ・ライアンとヒュー・ジャックマンの映画「NYの恋人」の最後のシーンで、メグが口にする言葉だ。響きが独特だったので耳に残っていた。映画の中では過去にタイムスリップしたメグ扮するケイトが、自分を高貴な家柄に見せなければいけないときに、とっさに発した名家の苗字ってことになっているけどね。私の大好きな映画のひとつ。相手役のヒュー・ジャックマンがとてもいい味出していたし。彼はいまブロードウェイのミュージカルで活躍中で、この前発表されたトニー賞で何かを受賞していたみたい。街のいたるところで彼のミュージカルの宣伝をみかける。

 
 
5月7日(金)

「ナツコ、ドラッグストアに行って、バーミツバカードを買ってきてくれる? 多分3〜4ドルだと思うの」とボスに言われた。バーミツバっていったいなに?! ミツワという店ならニュージャージーにあるって聞いたけど、そこの商品券だろか…。でも3〜4ドルって言ったし…。想像を膨らませながら、とりあえず言われたとおり、アメリカのマツキヨことデュアンリードへ行く。商品券だったらレジの奥にあるだろうからと思い、店員さんに聞いたら一緒に来いといってカードコーナーへ。なんとバーミツバカードの正体は、グリーティングカードのひとつだったのだ!! ユダヤ人の男性は13歳が成人で、そのときにbar-mitzvahという成人式を行うらしく、私のボスはそのパーティに臨席するために、このカードを持っていく必要があったらしい。

ボスはユダヤ系のようで、前にユダヤ語と英語が併記されたイラスト付のメモ帳を私にくれた。ボスもユダヤ語はよく知らないみたいで発音もわからないみたい。ローマ字表記だけどローマ字読みとは全然違うので読み方が想像つかない。ユダヤ人の特徴を皮肉ったことわざを読むと、彼らがどういう人たちとして捉えられているのかがわかって興味深い。用心深くて、奥さんがたくましくて、コンサバティブというのがステレオタイプなユダヤ人らしい。NYに来て初めてユダヤ人の存在を認識した。日本では知る機会が極端に少ない。こちらにいると普通に生活しているだけで、ユダヤ人、ユダヤ教、ユダヤの生活習慣に触れる。全身黒づくめで出勤し、車内でもずっと宗教書を読み続けてるユダヤ人もたくさんいるし、頭にお皿をひっくりかえしたようなキャップをかぶっているユダヤ人も同じくらい多い。ユダヤ教のある分派の既婚の女性はスキンヘッドにしなければならないので、街に出るときはカツラをつけていることを知ったときはかなり驚いた。

 
 
5月15日(土)

ブロンクスにあるヤンキーススタジアムへ。ヤンキース対シアトルマリナーズ戦を観にいく。話題のゴジラ松井対イチローの試合を、まさか見れるとは思っていなかったのだけど、知り合いがタダでチケットが手に入ったからと誘ってくれた。試合開始は13:05。今日はこれでもか、ってほどのいいお天気。試合開始前、松井の中学時代の野球部のコーチという人が登場して、日米リトルリーグの親交についてアナウンスがあったあと、松井の登場!! わぁ〜ホンモノだ〜!!! そのコーチと握手を交わし、写真撮影。そして国歌斉唱のあと試合開始。そのころにはスタジアムも超満員。アメリカ人の友達に「スタジアムに行ったら、ビールとホットドックだよ!」と言われていたのですごい楽しみにしていた。ホットドックはネイサンズのものでとてもおいしかった。イチローも登場〜。1塁側のスタンドから観ていたので、イチローが守備についているのがよく見えた。そして松井がホームラン打った〜。あらためて松井のすごさに感激。マリナーズはピッチャー交代で長谷川が登場。いっきに3人の日本人選手を見ることができて大満足。途中までかなりいい試合だったのに、9回から突然小康状態になり、13回の延長戦のうえにヤンキースはボロ負け。最後のほうはマリナーズの気力勝ちだった。かれこれ5時間くらい席に座っていた。試合終了後はNYNYという曲が流れた。このころにはスタジアムの人はもうまばら。。。ルームメイトもこの試合を観に来ていたらしく、試合後イチローの出待ちをしてバスに乗り込むとき見ちゃった!と興奮していた。いいな〜。

 
 
5月24日(月)

在NY総領事館に在留届を届け出てから、メイルでたまに領事館からお知らせが届くようになった。これがかなりすごい。だいたいテロがらみのアメリカ政府経由の情報提供なのだけど、前なんて「ビンラディンがアメリカ人や日本人、イタリア人を殺した人に報奨金を出すと言っている。アメリカ人1人殺せば金1キロ、日本人なら500グラム…」という内容。今回来たメイルは「ビンラディンが新たにアメリカを標的にしたテロを計画中で、準備はもう90%整っているとの情報。ジョージア州、ボストン、NYが標的の可能性が高いと米政府はみている。政府は危険度バロメータを今までのオレンジから変えるつもりはない意向」という内容が送られてきた。「領事館からのお知らせ」というのんきなタイトルにしては、内容がヘビーでしかもテロの準備が90%まで準備されていると察知しているのに、危険度をオレンジのままにしておくって「どないやねん!」って言いたくなる。これを読んだ在NYの日本人はいったいどうすればいいのだろか? このメール何かがずれてるんだよなあ、毎回。カンヌ映画祭で賞をとったマイケル・ムーア監督の新作を早く観たいのに、全米での公開は未定。日本のほうが先に観れるのかな。自由の国アメリカでも観れない映画があるなんて…。最近TVでみかけるジョン・ケリーの顔が輝いて見える、気がする。

 
 
5月25日(火)

日本企業B社の米国法人の方にお会いする。B社は日本で私が2年くらい働いていた会社。当時かわいがってくれていた方がカリフォルニアに転勤なり、今回NYに出張に来ていたので、1年ぶりくらいで再会した。そのとき一緒にいたNY支社の人と3人でしばし盛り上がる。私が今のインターン先は英語の上達するような環境ではないので職場を変えたいと思って探しているという話をしたら、このNY支社の人が「じゃあ、うちの部署で働くか?」と言ってくれた。仕事内容を聞くと私の希望にぴったりでこんないい話はない!って感じ。知り合いのいないNYだし、私は耳を疑うほどのいい話にとびついた。その人は会った時点でかなり酒を飲んでいる感じだったので、酔った勢いで言っているではないかと心配になり、何度も念をおした。名刺ももらい、私の連絡先も教えた。なにより、かなり詳細に私がするであろう仕事を説明してくれたし、信頼できるもと上司の後輩にあたる方なので私は期待に胸が膨らみ、早速家に帰ってレジュメを送った。

なかなか返事がもらえなかったので再度レジュメを送ったら1週間たってようやく返事がきた。それを読んで頭が真っ白になった。メイルには、先日はかなり酒を飲んでいて、私に約束したこともほとんど覚えてないこと。現実的にも私が働けるような状況でないこと、が書いてあった。お酒を飲んでいたとはいえ、あれだけ饒舌に話していたことを覚えていないことにも驚いたけど、あの時自分が何を言ったかをきちんと確認しようともせず、数行のメイルでこの件を終わらせようとしたシラフのこの人に一番びっくりして腹がたった。私にとっては古巣の会社の人で、初対面とはいえ束の間でも信頼してしまった私にはかなりの痛手だった。この一週間、B社とこの人にまるで恋をしてしまったかのように返信を待ちわびていたんだもん。なんでNYに来てまで日本人からこんな仕打ちをされなければならないの〜(涙)。自分でも予想以上にへこんだ

こういうときはニューヨーカーの人々の優しさが胸にしみる。いつも行く近所のグローサリーストアのおじさんんは小銭をオマケしてくれたし、20ドル札を握り締めてドラッグストアへ行ったら、レジで20ドルを超えていることに気付き、品物をひとつあきらめようとしたら、レジの黒人のお兄ちゃんが笑ってオマケしてくれた。ルームメイトも友達もみんな慰めてくれたので、それが何より嬉しかった。持つべきものは友達だとつくづく感じた1日でした。それにしてもあのオヤジムカツク。

 
 
5月27日(木)

レニー・クラヴィッツのニューアルバムを買った。相変わらずCoolでかっこいい。今回のアルバムはミスター・チルドレンを彷彿とさせる曲が数曲。ヘンリー・ハッシュというエンジニアが、前にミスチルのアルバムを担当したこともあるし、きっと何かが繋がっているにちがいない、と勝手に思った。レニーといえば、いまから8年くらい前に武道館にコンサートに行ったとき、一番楽しみにしていた曲をレニー本人ではなく飛び入りできたトム・ジョーンズが歌っていて、嬉しいやら、レニーの歌声でなくて残念やら…だったのを思い出した。

今回のアルバムの中の一曲はJay−ZがRapで参加している。私、彼のラップを聞いたのこれが初めてだった。名前はずいぶん聞いていたけど。NYで地下鉄に乗ると、行き先によってアルファベットや数字で電車が表されている。ちなみに私はFラインを使ってブルックリンとマンハッタンを往復している。よく行き先を書いた看板にJ・Z線という表記があるのを見かける。どうしてアルファベットとしては離れている2文字が同じ方面なんだろうといつも不思議だった。JとZ、JとZ…って考えているうちに、ん? そいえばJay-Zっていうミュージシャンいるよな、彼ってもしかしてここから名前つけたのかしら…なんて考えながら、家に帰ってルームメイトにそんな話をしたら、彼女の友達がそのあたりに住んでいるらしくそのあたりのことに詳しく、どうやら本当にそうみたいだった。彼の実家は地下鉄のJZライン沿いにあり、その辺りは貧しい黒人の人たちが多く住む地域らしい。Jay-Zは自分が超有名になったあとも、そのエリアで毎年炊き出しを町内に振舞うそうだ。いい話。ビヨンセの彼は心優しい青年なんだね。でも、そんなちょっと危険な地域に住んでいるルームメイトの友達の日本人女性もすごいな。なんでも、長い時間をかけて街が移り変わっていくのを自分の目で観察するのが好きだとか。

 

(6月へ続く)