●2004.7月● 職場のボスはゲイ
 
7月1日(木)

グランドセントラル駅近くにあるNY総領事館へ第20回参議院議員選挙の在外投票へ行ってきた。政治学修士ホルダーでもあることだし、在外投票のチャンスがあったら是非行きたいと思っていたので、在留届とともに在外投票の登録も行ったのはもうだいぶ前。そのとき、今回の参院選の投票に私の手続きが間に合うかどうか微妙なところです。なんて言われていたので、内心もしかしたらダメかな、と思っていたところに、在外選挙人証が送られてきた。日本の実家の市選挙管理委員会委員長印があったから、きっとはるばる地元から送られてきたのだろう。なので私の1票は実家のある市の一市民としてカウントされることになるのだね。それにしてもその地元では誰が立候補しているのかしら、情報がこっちにはないから家族から情報を送ってもらわないといけないのかな…とか1人で考えていたら、何のことはない、在外選挙人には比例区のみしか投票権がなく、選挙区の方はしなくていいと判明。なんか半分権利が剥奪された(おおげさ)みたいな気分。とにかく1週間の間に郵便か直接領事館へ行くかの方法で投票するようにと書いてあったので、直接行くことにした。

領事館のビルの入り口に係りの人が立っていて中に案内してもらう。入り口でセキュリティチェックがあり、中へ進むとそこは日本の選挙投票所と同じ雰囲気。うちの地元のところに比べて人数はやたら多いけど、2重の封筒に住所やあて先を書いたりかなり書くことが多かった。投票用紙は日本のと一緒。それに書いて自分で封筒に入れて、それをまた違う封筒に入れて選管の人に「お願いします!」と威勢良くお願いして立ち去ろうとしたら、まだ終りでなかったらしく呼び止められ、なにやら確認をして在外選挙人証に印鑑を押してもらい、やっと終了。比例区しか投票権がないわりには随分ものものしい感じだ。帰りのエレベータの中で一緒になった日本人夫婦が選管の人に「出足(投票に来る人の)はいかがですか?」と聞いたら「まずまずですね」と答えていた。

 
 
7月4日(日)

今日は7月4日。そうです、アメリカ独立記念日です。アメ人のみなさんは「Happy, July fourth!」と言って電話をかけたり、カードを送ったり、メイルでお祝いしあったりしています。私はまたまたボスにチケットをもらったのでブロードウェイのお芝居「SLY FOX」を観てきました。エリック・ストルツとリチャード・ドレフュスのコミカルなお芝居。いままで観たブロードウェイの作品と違って、歌も踊りもなくてひたすらセリフが続くものだったので、かなり私にとっては高度な集中力を要しました。その高度な集中力をもってしてもほとんどの笑いの波にはついていけず、かなりショック。そういえば、日本でお芝居(西洋もの)を観るとき、やたらとセリフが早口なのはブロードウェイ流なのかしら、なんて関係ないこと考えはじめたりして。

エリック・ストルツって名前はよく知っているのだけど、なんの映画にでていた人かは全然思い出せず。顔がマイケル・J・フォックスにすごい似ていると思った。あとでネットで調べたら「恋しくて」でリー・トンプソンとメアリー・スチュアート・マスターソンと共演している人だった。17年も前の映画だ。「Back To The Future」って最初この人主演で映画化されたのに、完成したら主人公が根暗に見えるという理由でマイケルに変更になって撮り直しされたらしい。どうりでこの2人似てる。とにかく今後はブロードウェイでアメ人と一緒のタイミングで笑えるようになりたい、と思って会場をあとにした。

その後バイトへ。バイト先は1st Avenue沿いにあり、独立記念日の花火が丁度よく見えた。しかも店は予想通りヒマ。1組のカップルのみ。花火は2ヶ所であげられていて自由の女神付近の方の花火が良く見えた。去年も見ている日本人の友達は口々に、「日本のに比べるとこっちのは大したことないよ」と言っていたけどその意味がわかった気がした。街はちょっとしたお祭り騒ぎ。近所でものすごい音がして、絶対誰かが発砲したんだと思って見に行ってみたら爆竹だった。何度も誰かがしかけていて発砲のような音が鳴り、そのたびに路駐している車のセキュリティセンサーが反応して、ものすごいけたたましい音がしばらく続く。爆竹の音より、その車の音のがうるさい。花火は1時間くらいであっという間に終わってしまった。そいえば、アメ人の友達Dはこの日のために花火の打ち上げ講座を受講しに行っていたけど、今日は活躍しているのだろうか。。。

 
 
7月9日(金)

今日でGradisの会社でのインターンは終了。かれこれ4ヶ月ここにお世話になった。ボスと一人の同僚とボスの息子さんの4人しか基本的にいない、こぢんまりした職場だったけど、みんな良い人たちで初めての米企業でのインターンという緊張をほぐしてくれた。でも仕事が個人によっているので私としてはものたりない部分が少なからずあり、インターン先を変えたいと斡旋している学校側に申し出ていて、この度、学校のトランスレーションセクションに職場を変更することにしたのである。

ボスのGradisは肝っ玉女社長という感じで、とても寛大で優しい人で私にもとてもよくしてくれた。仕事で扱っているブロードウェイの100ドル前後のチケットも何度もプレゼントしてくれて、彼女のおかげで私はお金を払わずしていろんなShowをとてもいい席で観ることができた。でもやはりインターンの目的は英語力の向上なのでこの会社では限界があると感じ、今回このようなことになった。ボスが私のためにピザをオーダーしてくれてみんなで食事。私がNYに来て初めてピザを食べたのもここだったっけ。いろんなところに届け物をするおつかいに行かされたおかげでマンハッタンの隅々を歩いた。それもいい経験。英語もままならない私に親切してくれて、ほんとうにあったかい会社でした。また帰国する前に遊びに来る約束をしました。

 
 
7月11日(日)

今日はヤンキースタジアムへ2度目の野球観戦。ヤンキースvsタンパベイズ。ものすごいいいお天気で気持ちいい。前回観にいったとき迂闊にも半袖焼けをしてしまい格好悪いことになってしまったので、今回はノースリーブを着ていった。前の席に座ったアメ人ファミリーは親子3代で観戦に来ていて、特におじいちゃんが一番熱心なヤンキースfanと言った感じ。孫の少年の1人は松井のT-Shirtを着てグローブをはめていた。ヤンキースが得点したり、ヒットを打ったりする度に、そのおじいちゃんは家族みんなと手をパチン合わせて喜び合う。その様子がとてもほほえましい。一番安い席だけど3塁側外野の真上だったので松井が真下に見える。でもバッターボックスははるか遠くなので、誰が打っているのかは大スクリーンを通して見る。かなり目立つ位置に「読売新聞」というスポンサー看板があるのだけど、バックのカラーがオレンジ色でこれが敵であるメッツのチーム色だということでかなりのブーイングらしい。せっかく多額のお金を出しても文句を言われているとは…。

こっちは試合の間に観客を飽きさせないような工夫がいろいろあってとても楽しめる。攻撃と守備がポジションチェンジする時間にはヤンキース・トリビアのクイズコーナーが始まり、観客に答えてもらって選手がVTRで回答を言ったり、ヤンキース自体の宣伝があったり、観客が応援している様子を映したり。7回のゲームの前だったか後だったかに「ゴッド・ブレス・アメリカ」の曲が流れて会場中が一体となって合唱する。なんかアメリカらしくて私は気に入っていたのだけど、なんでも911テロの前までは別のもっと楽しい曲が流れていたのに、テロ後からこのパトリオティックな曲に変更になったらしく、イラク戦争にからんでこの選曲に反対する球団や選手もあるとのことだ。911直後は全球団がこの曲に変更したらしいが、シアトルマリナーズなんかはいち早く元の軽快な曲に戻しているらしいから、やはりテロのあった東海岸とは違うのだろう。

とにかく客向けにいろいろ工夫されている。敵の攻撃があと一打で三振の時はノイズをたてるようにと指示が出たり、ヤンキースの選手がピンチの時も応援するようにと指示が出て拍手をしたり、会場が一体となっている感じがする。ホットドックもおいしいし、さわやかな風が吹いていていい天気だし、そして前回に引き続きなんとまた、松井がホームラン!! 友達と2人で興奮して「まつい〜〜」と叫んだら回りにいた日本人らしき人々が振り返った。すごいなぁ、松井は。今日で前半戦が終了し、オールスター戦が開幕するらしい。ここでも松井が活躍しますように。

 
 
7月13日(火)

今日から新しいインターン先での仕事が始まった。通っていた語学学校で翻訳事業部でアシスタント業務をすることになった。ヘッドのミスターCと2人の女性がコアスタッフで、インターン学生はそのアシスタントをする。私の前任者はフランス人の大学生の女の子Fちゃん。彼女はリヨンの大学の学生さん。実家は人口5000人とかの小さな村だって。ミネラルウォーターで有名なVolvicの源水のすぐ近くらしく、「毎日浴びてるシャワーはVolvicの水なんだよ」と言っていた(余談だけどNYの水道水も日本の実家あたりの水よりずっとおいしいんだよね。これは最初驚いた。浄水器をとおさないで飲んでもまずいとは思わない)。

仕事はクライアントから来た翻訳案件を、我々が契約している通訳者さんに依頼するコーディネート業務。クライアントはエスティローダーとかブルックリン・ライブラリーとかが多い。エスティローダーは毎回コスメの新製品の注意書きを英語からスペイン語に翻訳するというものが多いみたい。日本語、韓国語、中国語だけはほかの言語へ訳すのに比べて若干割高。アメリカ人からすると中国語も日本語も区別がつかないから、時々私にボスが「これは日本語?それとも中国語?」と聞いてくる。この前ビデオの表題を持ってきてなんて書いてあるのか?って聞かれたので見てみたら「長谷川リエ NIKE」って書いてあった。「ハセガワリエは日本で有名なモデルで、彼女がナイキを身につけているビデオなんじゃないか」と説明しておいた。

 
 
7月16日(金)

インターン先のボス、ミスターCはゲイである。さすがNYだわ。そう言われて見ればミスターC、外見はごく普通の40歳前後の男性だけど、とてもおしゃべりだし、お茶目なところがあるし、いつもハイテンションだし…確かにゲイの特徴をおさえているかも。この前なんてフランス人Fちゃんのところにコソコソ声で「洗面所に行ってこのコップに水を入れてきてくれない?」って言ってきた。Fちゃんが「どうして自分で行かないんですか?」って聞いたら「さっきからもう2回も行っていて、トイレの前のソファに座っている人たちにこれ以上会いたくないんだ」と言っていた。なんかその言い方がおかしくてお茶目な人だなと思っていたところだったのだ。

毎日1:30になるとShaking timeといって私たちの部署のメンバーを一部屋に集めて身体をShakeさせる運動をすることになっている。いい気分転換になるからいいでしょ!とミスターCが提案したものだ。私の足のペディキュアをみて「それ自分で塗ったの? いいね」「信じないかもしれないけど、自分もたまにサロンで手と足に塗ってもらうんだよ。あの気分のよさは女性だけにさせておくのはもったいないでしょ」と言っていて、ちょっとめんくらった。「何色塗ってもらうんですか?」って聞いたら「透明のやつ」だって。確かにそう言われてみると街中のネイルサロンを覗くと男性も普通に順番待ちしている。そんな愉快なミスターCは今日からミニバケーションに行くらしく、早退してニュージャージーにあるビーチへ出かけて行った。出かける前に私たちのいる部屋のE子さんのいる小さなスペースの扉を閉めて着替えていた。スーツ姿から半袖半ズボンに着替えてすっかりバケーション態勢。会社で着替えていくなんておもしろいなあと思いながら見ていた。

 
 
7月23日(金)

今日はインターンの時間の最後の1時間くらい、ボスのミスターCじきじきに仕事を教えてもらった。クライアントから来た翻訳の仕事を通訳者に依頼するために電話をかけるという作業を、ミスターCがお手本を示してくれた。ものすごい早口であっという間電話が終わってしまった。「ね、簡単でしょ」とミスターC。「今日はこれからWine&Cheeseに行くんだけどあなたも来る?」って誘ってくれたけど、今日はバイトだし行かれないので断った。そして彼は私との仕事が終わると、またE子さんの部屋の扉を閉めて着替え始めた。そしてまた半袖半ズボン。ビーチに行くのにはその格好でOKだと思うけど、「ワインとチーズにも同じ格好なんだ…」と部署のみんなも同じことを思ったらしく、いろんな人に「その格好で?!」と聞かれていた。なんかワインバーに半袖半ズボンでいるミスターCを想像しただけでおかしくなってしまった。

 
 
7月25日(日)

リンカーンセンターのフェスティバルのひとつとして、中村勘九郎率いる平成中村座が公演中で、今日が最終日。わずか9日間の短い公演だし、チケット入手はかなりの困難だったらしい。勘九郎のお姉さんが経営するミッドタウンにあるバーで働いてる友達の友達曰く、100ドル払えばチケットが手に入ったらしい。そんな身内関係でも100ドル払わないと買えないなんて、とびっくりした。とにかくその場の雰囲気だけでも味わいたいし、最終日だし何かの間違いで会場に入れたらいいな、などと根拠のない期待をしながら会場へ。開演までまだ時間があったので、観客もまだ全然集まっていなかった。と突如日本人女性2人組がガードマンと一緒に会場を見学していた。よく見てみたら大竹しのぶ&渡辺えり子だった。関係者のひとから「10分前に来てください。中にご案内します」みたいなことを言われていた

こうなったらセレブ観察してやる〜ということで、しばらく会場前で張り込み開始。最初に気付いたのは小沢征爾氏ファミリー。征爾さんの姿はなかった。セイラさんが素敵だった。そのあとしばらくして来たのが「ひろみ郷夫妻」。最初は全然気がつかなかった。奥さんはセレブっぽい雰囲気を漂わせていたのですぐ気付いたけど、見たことのない顔だったし、ただの金持ち夫婦だなと思って見過ごしていたが、サングラスをかけたヒロミ郷だということにしばらくたって気付いた。髪形が稲川淳二みたいになっていて全体としてあまりいけてなかった。やはりNYにいたのだね、ヒロミ郷は。結局有名人で私が気付いたのはそれくらいだった。

で、公演開始の時間になったら勘九郎さんがすぐそこを通って会場へ入っていた。その直後に会場から中村橋之助さんがでてきた。彼の大ファンである私は思わず「ハシノスケさ〜ん」といったら、笑顔で手を振ってくれたーーー。感動。そばに私と同じようにチケットなしのミーハーさんが2人いて、その人たちは私のようなにわかfanではなく昨年の大阪公演にも行ったことがあるようで、今回はチケットがないけど浴衣を着てわざわざここまで来たそうだ。すごい熱意。私のバイト仲間で俳優学校に通っている日本人の男の子は、今回この公演の現地オーディションを受けたが残念ながら出ることができなかったと言っていた。でもその代わりに初日前日のプレス向け公開稽古を見に行ったらしく、ものすごいよかったと言っていた。現地のNewsでも大評判だったみたいだしね。でもこの日の観客のほとんどは日本人だったけど。。。

 

(8月へ続く)