正社員、派遣社員しながら大学院、ニューヨークでインターン、そしてまた日本へ…。「自分流ワーキング」を探して経験を重ねる皆川夏子(仮名・30才)の日記です。めまぐるしく変わる環境と個性的な人たちの中で、彼女はいったい何を見つける!?
   
●2005.5月● いきなり責任者!?
 
5月9日(月)
 今日からいよいよ仕事開始。研修が始まりました。

なんと中途採用なのに同期が20人以上いてびっくり。同期なんていても数人だろうと思っていたので嬉しかったけどいったいどんな構造になっている会社なんだとも思った。研修が始まって指揮をとった人は50歳前後の人事部の男性。銀行マンから転職してきたとのこと。自分自身もこの会社にきて日が浅いのでということで新入社員の視点と長年の社会人、金融人としての観点で色々雑談をはさみながらの研修はそれなりに意味があったと思います。とにかくこの会社は新しいので勢いがあること。そのことの長所短所があって短所に我慢できない人は辞めて行くということのようです。それが中途採用同期が20人以上いる理由らしい。私は直属の上司になる人からその辺のことをわりと詳しく聞いていたのでそういう理由で辞めたくなるということはないとは思いますが・・・。会社としてはさまざまな事業をしていてその中にはレストランも数店あるので同期の中にはソムリエやパティシエもいるんです。年齢もさまざまだし、なんだかこれからが楽しみな面々です。

 
 
5月10日(火)

実際の部署にはいっての仕事が始まりました。

私を含めた部署全員の仕事分担表が配られたのですが、読んでびっくり。英語に関する仕事の責任者にすべて私の名前が。ほんとびっくりした。そして同時に背筋が凍りついた。英語での決算書、財務諸表、事業報告書などなど日本語でもおぼつかないようなものものしい書類を私が作ることになってしまったようなのです。いままでは外注していたというこれらの業務を私がやるなんて・・・「無理だよ〜」という言葉が、最初に私の脳裏に浮かびました。でもおそらくそれを承知で私を責任者にしてくれているんだと考えると、ネガティブになっている場合ではない、期待に応えなくてはとも思います。とにかく初っ端からガツンと責任がのしかかってきてかなりびびっております。

 
 
5月11日(水)

今日は決算の報告書をもっていわゆる「投込み」へ。

投げ込みとは東京証券取引所の中の記者クラブの投函口に自分の会社の決算報告書を投函しにいくこと。私は兜町も東証も初めて。記者クラブにいくとまずホワイトボードに自社名と用件を書きます。小さなボードに小さな字で書き込むのですが、なかには数行をつかってながながと書く人がいます。するとカウンター越しに年期の入ったおばさんが「1社一行にしてくださいねぇー」とすかさず指示してきます。狭い部屋に人がごった返しているのでこういう強気なおばさんがいないとこの場は収集がつかなくなってくるというのもうなづけます。日本を代表する経済系の新聞社の投函口にすみやかに入れ終わったあと、軽く所内を見学。TVで見かける円を描いた電光掲示板に今日の各社の株価が映し出されて回っていました。その延長線上には各社のTV局のブースがあってリポーターが仕事をしていました。上場する企業はこの場所から始まるのですね。「上場する時になる鐘」というのがあり、うちの社長はこの鐘の音を感慨深く聞いていたそうです。上場の意味をまだよくわかっていない私。株という大きな荒波の中に船出した心境でございます。

 
 
5月18日(水)

今日はうちの会社の監査役にもなっているとある会計士さん主催の勉強会へ参加してきました。新宿某所で行われたその会の参加者はみなさんおそらく税理士や会計士、経営者系のおじさま方であろう人々でうめつくされていました。ここ数日ですっかり時の人になった、「年収100億のスーパーリーマン清原さん」と仕事をしている会計士の方、という人も参加していてすこしだけ清原さんのエピソードを話す場面がありました。彼曰く、「清原さんは、実直な寡黙な人でとにかく綿密に仕事が細かくて綿密である」とのことでした。部下はわずかに3人でその限られた人数の中で年間数百億数千億を生み出すのだそうです。評判が評判を呼んでいまでは最小単位が1500万円からしか受け付けていない上にいまはもう締め切っているそうです。私にはまったく関係のない世界の話なのでふぅ〜んとただただ聞いてたまげるだけでした。ちなみに清原さんの来年の給与は70億円くらいだそうです。

 
 
5月19日(木)

今日は上司について機関投資家めぐりをしました。今回出た決算の内容を持って、わが社のビジョンと今後の展開を伝えながらコミュニケーションをとるという地道な作業です。投資家という人種の方々自体が始めてだったので興味津々で座っていただけなのですが実にいろんな方がいて飽きませんでした。ただただ数字を追いかける人。会社の今後に期待していろんな話をしてくる人。投資家にもさまざまなタイプがあるようです。

 
 
5月26日(木)

出張で名古屋へ。

駅に降りると「愛・地球博」から帰る元気のいい女性の集団が闊歩していて万博ムードムンムン。そんな人々をよそに私たち一行は会社へ直行。さっそく仕事開始です。今回の業務は期中監査をする会計士の先生方のお手伝いをすることでした。名古屋の社内は少数精鋭でやっているのでコンピュータ管理よりも精度の高いフローが人によって日々励行されているのですが、やはり第三者の立場にたった「監査」という立場からみて洗いださなければならないのが辛いところです。会計士の方々がどんな視点で業務フローをチェックしているのかを注意して聞いていると新たな発見があって興味深いのですね。でもやっぱり少数精鋭スタッフによる完璧さは監査の目をとおしても狂いはないということが作業をしていくうちにどんどん見えてきました。今回の一連の作業を振り返って思い出したことがありました。ある人が数年前にこんなことを言っていました。「いま、世間がこぞってパソコンの仕組みを勉強したり操作方法を覚えようと躍起になっているが、コンピュータの未来からみたらいまはまだ、車でいえばマニュアル車である。そのうちオートマ車が主流になって誰でも簡単に運転が出来るようになる日が必ずくる。いまのパソコンは立ち上げるのも終了するのも面倒くさいプロセスを要求するけどほんとに使いやすい家庭用のパソコンなんてTVみたいにスイッチひとつでオンオフができて複雑な操作なんて一切必要ないものにならなければおかしいのである」みないなことが書いてあったんです。機械オンチの私、これを読んで非常に感銘をうけたのを覚えております。

ここ数年、いろんな会社で社内全部のシステムを新しくするために効率性・合理性という題目のもとに莫大な予算がくまれ、大騒ぎしてシステム変換をはかっているみたいです。わずかながらに私自身もその中にはいって見聞きしていて素人ながらに思うのは、どうも合理的なシステムの割に不合理なことが多すぎるなぁということです。あまりにもそういうことがそこここで行われているのを目の当たりにして私は最近、将来便利になるためにいま短期間だけの出費や手間ヒマのつもりでやっているみたいですけど実際はそんな一時的なものでは済まないのでは?と思い始めています。そいえば、この前とある大手のシステム開発の会社の社長が言っていたんですけど、今後の10年、IT産業革命が終了するまでにあらゆることがシンプルな回線でつながっていくというのです。そうなってきたらいま、まだマニュアル車レベルのシステムに各企業が一生懸命費やしているお金と労力がまったく報われない日がすぐくるような気がするんですが・・・。

 

(6月へ続く)