正社員、派遣社員しながら大学院、ニューヨークでインターン、そしてまた日本へ…。「自分流ワーキング」を探して経験を重ねる皆川夏子(仮名・31才)の日記です。めまぐるしく変わる環境と個性的な人たちの中で、彼女はいったい何を見つける!?
   
●2005.10月● 株主さん、お願いしますよ…
 
10月6日(木)

怒涛のような2ヶ月を過ぎ、業務がだいぶ落ち着いてきた。部署としては、今後の予定や役割分担の仕切りなおしをする時期である。うちの会社には某会社のオトベさんのような社長付広報担当者がいないので、社長の対外的な取材等はうちの部署でおこなっている。おもに雑誌や新聞の取材である。その対外的なやりとり、取材を受けるか受けないかの判断、などを今度から私がメインこれから担当することになった。

いままでも主な取材には同席していたのでだいだいの雰囲気はつかんでいるつもりだが、自分がメインで判断をしていくとなると責任も重い。できあがってきた雑誌が届くと社長の髪型がイマイチだったりするのだけど、よく考えたらスタイリストとかいないからそれも自分がしてあげないといけないのだった。社長のネクタイなおしたり、髪型を整えたりなんて、妙に緊張しそうだしなぁ。。いままで担当していたAさんが言うには、度々依頼してくるTV番組があったりするらしい。断りつづけてもまたしばらくたつ依頼がくるというのだ。まあその番組にでるのはありえないとしても、とにかくいろんな方面から依頼がくるわけで、ある程度聞いた時点でそれがどんな媒体なのかわからなければ判断のしようがない。

これからはそういうことも少し、日頃から気にしておく必要があるな〜などと思いながら帰宅してTVをつけたら、「名刺の花道」という深夜番組をやっていた。社長が2名、自分のいままでもらってきた名刺を自慢しあって、インパクトを競うというような内容だ。結構おもしろくてついつい最後まで見てしまった。うちの社長がこの番組の出演依頼がきたら、どうなんだろぅ。。。などとつい考えてしまった。

 
 
10月13日(木)

最近よく、ドトールに行く。仕事をしていると無性に飲みたくなる。で、社内の缶コーヒーは気が進まないので近所のコーヒー屋というとドトールなのだ。しかもドトールよりすこし値段設定が高めのルカフェドトールしか周りにない。高いけど独占市場である。で、こんなによく使うんだから、いっそ株主になって株主優待で安くコーヒーを買うことはできないものか、、と浅知恵が働き、ちょっと調べてみたら、株主優待は数千円のギフトセットだった。がっかり。

しょうがないから企業情報をちらちら見ていたら、最近、ここの社長が私財でビルを建てたらしい。1Fはブランドショップで上はテナント貸しして高級レストランとかをいれ、地階にドトールの顔となるような理想のカフェを作り上げる、という構想が書いてあった。おっ、行ってみたい。住所をみたら会社から近いらしい。ということで覗いて見たらまだ、上階のレストラン以外は建設中だった。地階もまだらしい。残念。それにしてもビルの名前と地階のカフェの名前が同じで「bird feather」というらしい。なんかビルの名前にしても、カフェの名前にしても変わっているなぁ、と思った。ひょっとして、と思ってドトールの社長の名前を調べたら、やっぱり!「鳥羽さん」だった。

 
 
10月17日(月)
とくにこれといった理由があるわけではないのだけど、このところ風水が気になっている。たまたま会社の近くに有名な某風水のお土産ショップがあるので覗いてみた。1Fのそのお店に入ると店の人が、「3Fまでございますのでよろしかったらご覧下さい。」と言ってきた。ここまでは普通の店なのだが続いてこう言った。「3Fから順番に2F、1Fとご覧になると運気が上がると言われております」だって。内心『きたーー!!』と思いつつ、興味津々で「じゃあ、3Fから見ます」と言ってみた。

他に客もいなかったので店員さんがつきっきりで案内してくれる。エレベータで3Fからまわる。キーホルダーをネットで見て欲しいな〜と思っていたのでそれを何気なく探しながら店内をみる。デザイン的にいうとお世辞でも素敵とはいえないけど、風水というフィルターがかかるとそれらしく見えてくるから面白い。そして2Fから1Fに降りるときそこに螺旋階段があり、「これは厄払いの階段と言われていますのでこちらをお使いください。」と言われ、笑いそうになりながら降りてみた。

結局ほしかったデザインのストラップはなくてほかのやつを買った。帰りがけに「外に神様がおりますのでよろしかったらお参りして帰ってください。」とのことプチ神社みたいなのがあってせっかくだからお参りした。いや〜楽しかった。ただの買い物が立派なエンターテイメントになっている。風水ビジネス恐るべしだ。

 
 
10月20日(木)

企業のありかたはさまざまだと思うけど、最近のベンチャー企業の社長の有名度合いはすごいとつくづく思う.メディアへの露出が多く、その会社が何をしているのかを詳しく知るよりも社長そのものの情報の方が先行している感じ。

知名度というのは確かに大切な部分もあるのでいいけど、肝心なその企業のブランドの知名度とは正比例しているのかどうか。。会社が出す、「リスク情報」には『現社長になにか万が一のことがあった場合には業績に影響がでる場合があります』という内容が入っていることが多いが、そうなってくると社長もひとつのブランドとしての価値は高いはず。でも永続的に会社が成長していくには社長のチカラだけに頼っていくことはできないわけで、会社そのものが作り上げているブランドを時間をかけて熟成させていかなければならない。

なぜこんなことを考えたかというと、今日社長のインタビューに同席した際、先方が質問で競合他社のA社の方が知名度が高いですよね、みたいなことを聞いてきたとき、社長がその人に「A社のブランド名ご存知ですか?」と問い掛けたところその人は答えられなかった。つまりA社は社名と社長は有名だけど手がけている事業のブランド名は意外と知られていないのだ。ちなみに私も即答できなかった。このとき私はハッとした。会社を有名にすることと事業ブランドの価値を上げて有名にしていくこととは違うものなのだ。ブランドという目に見えないものを商品にしていくということ自体、私にとってはまだなじみが薄くよくわかっていないと感じた出来事だった。

 
 
10月26日(水)

会社として対外的になにかを発表し、株価が下がろうものなら即効、心無い株主からの電話が増える。そりゃあ、応対する責任はあるとは思うが最近どうもおかしいんじゃないか、、と思いはじめた。 巷では、村上ファンドや楽天の株の話題でもちきりである。自分の業務的にも決して他人事とは思えないので、色々と考えるところがある。

近頃よく耳にする「株主利益」。これはシンプルなようで実に深い言葉だ。会社に対して株主としてお金を投資しているのだから、株主に納得がいくような経営をしなければいけない、というのは確かに正しい。だけど所詮、乱暴な言い方をすれば、競馬と同じ、自己責任の世界である。会社側が頼んで投資をさせたわけではなく、株主は自分の判断でお金を払ったのである。個人株主で競馬と同じような感覚で買っているにもかかわらず、馬主や調教師を必要以上に攻め立てるのはいかがなものか。

だいたいそういう抗議を表明してくる人に限って大株主ではなく、1株かせいぜい数株くらいしか持っておらず、しかも会社に対する知識も薄い。株主は有限責任といって自分が出した金以上の責任はとらなくていいのだ。裏をかえせばそれ以上口をつっこむのはオカド違い。だって社員は生活がかかっているのだから、その全責任をかけて経営判断を行っている。それに対して、有限責任しかない株主があーだ、こーだいってくるのに時間を割いて非建設的な話にお付き合いするのはどうも割りに合わない。最近つくづくそう思う。

株主にぎゃーぎゃー言われるのが嫌で、なおかつお金に余裕がある会社は市場から撤退して非上場で経営することを選択している。だけどやぱり正々堂々と市場で勝負をかけて、リスクをとって経営していく会社が増えなければ市場の活性化はないと思う。「リスクをとる」というのはおいしいリターンがあるかもしれないし、ないかもしれないということだ。株主は会社に電話をしてくる前にもう一度それを考えてもらいたいものだ。

 

(11月へ続く)