正社員、派遣社員しながら大学院、ニューヨークでインターン、そしてまた日本へ…。「自分流ワーキング」を探して経験を重ねる皆川夏子(仮名・31才)の日記です。めまぐるしく変わる環境と個性的な人たちの中で、彼女はいったい何を見つける!?
   
●2006.4月● いわゆる「ストレス」ってやつ
 
4月6日(木)
部署が変わってPR担当になってから、当たり前だけど環境や合う人、脳みその使う部分ががらっとかわった。まだそれに慣れていなくて手探りな毎日です。同じ会社にいるのに、仕事が変わると見え方まで変わるのが不思議。いままでは会社の投資家との関わりだったのでトップが決めたことにいつもYESでついていくことが当たり前だと思っていたところがあった。でも最近は、会社に対する疑問や疑念が沢山思いつくようになった。ほとんどが事業の利益構造に関することなので、いま自分ができる限りのことをして利益貢献をしなければいけないということに尽きるのだけど。

ベンチャー企業はハチャメチャなところが沢山あってそこがまた魅力でもある。私が今関わらせてもらっているプロジェクトのメンバーは私を含めてその道のプロフェッショナルな人ばかりではないけど、そんな人間に大きな仕事を任せてくれるのは大企業では有り得ないことだ。それを考えるとゾクゾクするほど楽しいし、やりがいがある。

 
 
4月14日(金)
この前、社内で席替えをしたばかりなのに、また席替えをしました。今はプロジェクトチームに参画しているんだけど、本格的にかかわるための席替えです。で、隣の席になった人がどうもマイナスのオーラを発している気がしてならない、今日この頃。その人は同世代の女性で、見た目はソフトな感じの女性で話があうかな、とか軽く考えていたら、どうやらそんな感じではなさそうだ。彼女がしてきた仕事を一部共有する必要があるのだけど、全然教えてくれないし、アポイントにも同席させてくれない。どうやら、かなり警戒しているらしい。噂では前から自分の仕事の縄張りを変に自己主張するところがあると聞いていたけど、想像以上の勘違い系だわ、この人。まだ隣になって数日だけどすでに私たちまわりの席の人たちの間では苦笑の種に。この会社に入っていままで一度も感じたことのなかった、いわゆる「ストレス」ってやつがこの人のおかげで芽生えてしまった。

いままでが幸せすぎたのかもしれないけど、ストレスを感じながら仕事を一日終えるとどっと疲れが出るということを初めて知った。ここ数日、自分の席につくのがはっきりいって憂鬱。そういうときは目に見えないオーラの壁をつくって自分とは関係ない人、って思うと気分もすっきりしていい、と前の会社にいたとき聞いたことがあって実践してみたことがある。そしたらその人が程なくして転勤になった。それ以来、私のまわりで、内心「嫌だな〜」と思う人が次々と転勤や異動になり、私のもとから去るようになった。とある男性なんて私の同僚をいじめていてかなりうっとうしかったから、人一倍強いオーラを送っていたら、なんとアメリカへの転勤が決まってしまった。このときはさすがに笑えた。しかも本人は栄転だと思っているので、WIN-WINの関係じゃないけど、ハッピーエンドな結末。 これら、もちろん私の勝手な妄想で、ただの偶然だとは思うけど、信じるものは救われる、とばかりに今回この女性にも強いオーラを送ることに決定! さてどうなることやら。

 
 
4月19日(水)
雑誌の編集者の方々と会食。お二人の女性ともお酒も強くて料理にも詳しい。仕事柄生活も不規則になるので色々な知恵をお持ちで、私にとってもとてもためになることが色々と聞けた。飲みすぎちゃったなと思った日は飲んだあとに、これを飲むといいらしい。ただし、胃腸薬じゃないので「飲む前に飲む」をやっちゃうと、胃腸が元気になりすぎて、かえって暴飲暴食を招いてしまうおそれがあるので飲んだあとに飲むのがポイントらしい。なるほどねぇ。確かに、自分がお酒を飲むときのことを想像すると、ちょっとだけ、のつもりが何杯も飲んでしまうってことのが多いのだから、「飲んだあとに飲む」っていうほうが合理的に思えてきた。今度飲んでみよっと。
 
 
4月25日(火)

 ワインの業者さんとお話をする機会があった。 首都圏のどこのレストランがはやっているのかという情報をおさえているので色々聞けてとても面白かった。私も一度行ったことがある鉄板焼きの高級レストランが毎月ものすごい売り上げているとか、TVでもよく使われる都内のあの店はグラス2000円以上のシャンパンがバンバン出るとか。韓国ではワインといえばチリ産のワインが圧倒的なシェアなんだけどその理由はチリ産だけ関税が優遇されているからなんだって。面白い。

 
 
4月27日(木)

NHKで夜中にやっている「ActorsStudio」というアメリカの対談番組。これ見終わると夜中の3時とかになるから次の日がつらくなるのをわかっていてもつい、見てしまう・・・NYにいたときからちょくちょく観ていた、私の大好きな番組。英語の勉強にもなる。今をときめく映画俳優が出てきて演劇学校の生徒たちの前でトークショーを行い、その後質疑応答に答えるというものだ。今回はビリー・ボブ・ソーントン。アンジェリーナ・ジョリーの元ダンナということしか知らなくて話をしているのを見たのはこれが初めてだった。

幼い頃、失読症だったからなのかどうかはわからないけど、話し方が年齢のわりにつたなくて不思議な人だなぁと思った。彼が出演した作品の中で「チョコレート」という作品に対するこだわりを自分の父親との関係を絡めて話をしていて、その映画の1カットが流れた。父役のビリーと息子の会話のシーンだった。少年が銃を父に向けながら「僕のことが憎いんだろう、答えろよ!」と言う。しばらく躊躇した父親が「憎い、ずっと昔から憎かった」と言う。すると少年は「僕は父さんを愛していたよ」と言うやいなやピストル自殺を図る。そんなわずか数十秒の映像だったのだが、ものすごい衝撃と感銘を受けた。親子という人間関係について考えさせられた。ビリーは自分の父とのけしてうまくいっていなかった関係を話しながら、この映画にギャラを下げてでもどうしても出たかった話をしていた。

彼の父親は人種差別主義者かなにかだったようで、息子である彼はどうしてもそこが許せなかったらしい。自分の愛する血のつながった人がどうしても相容れない思想や考え方をもっていたとしたら・・・。きっととっても苦しいことなんだろうと思う。この映画をちゃんと観たいと思ったし、この俳優を尊敬してしまった。けど、この番組、数年前の再放送なので、彼がアンジーをまだ「僕の妻」と言っていたのが、ちょっとせつなかった。

 

(5月へ続く)