正社員、派遣社員しながら大学院、ニューヨークでインターン、そしてまた日本へ…。「自分流ワーキング」を探して経験を重ねる皆川夏子(仮名・31才)の日記です。めまぐるしく変わる環境と個性的な人たちの中で、彼女はいったい何を見つける!?
   
●2006.5月● 番組撮影に立会い
 
5月4日(木)
とうとう観てきました。 映画『プロデューサーズ』 いや〜よかった。私にとっては1年半越しの思いが叶ったのだった。 NYでもずっと気になっていて帰国直前に観にいこうとしたら、なんとキャストがネイサン・レーンとマシュー・ブロデリックじゃない人に代わっていてショック大。 失意のうちにロンドンに渡ったらなんとネイサンはロンドンのプロデューサーズに出ていた!これは運命だと思って劇場にチケット買いに行ったらキャンセル待ちがでるほどの大人気ぶり。短い滞在では観ることはできなかった。またまた失意のうちに日本に帰国して、しばらくしたら映画版が公開されることになってしかもオリジナルキャストで。。。。そしてようやく念願叶ってみて来ました。

期待どおりの面白さ。ブロードウェイで観た沢山のミュージカルの雰囲気を思い出してとても懐かしく、楽しい気分に浸ることができました。マシューはコメディの雰囲気がどうも『オースティンパワーズ』のマイク・マイヤーズを彷彿させた(きっと顔の骨格が似ているのだろう)ネイサンは期待どおりの最高のお茶目ぶりだし。最後の最後まで飽きさせないサービス精神には恐れ入りました。 ブロードウェイでミュージカルを実際に観るまでの私は食わず嫌いで興味がなかった。

日本で劇団四季とかを見る気がまるで起こらなかった。でもNYでは抵抗もなくミュージカルを観て本当に楽しめた。10演目以上みたと思うけど帰国直前にみた『bombay dreams』は衝撃的に楽しかった。 ミュージカルって生だから、当然ビデオとか売ってないし、その場で観る以外にない。生モノだ。その価値や貴重さがあとになってようやくわかった。よくロングランで何年もやっているミュージカルがあるけどそれってものすごいことなんだということも最近わかった。『bombay dreams』はブロードウェイでの公演が比較的早く終わってしまった。っていうことはもう二度と観れないのだ。再演がない限り。そういう当たり前のことに今まで気がつかなかった。長いこと日本でビデオやTVや映画みたいに、今ここで観なくてもあとでいつでも観れるもの、に慣れてしまって、ミュージカルや芝居などの生モノの価値をわからないでいた。いや〜ミュージカル恐るべし。ブロードウェイ行きたーーーーい。NYに行きたーーーーーーーーい。

 
 
5月9日(火)
先日、あるスペシャル番組の撮影がうちの会社の店で行われ、そのVTRが送られてきました。 取材時間はのべ4時間。ディレクターとの打ち合わせ、撮影ひとつひとつに時間をかけて準備をしました。このような撮影に最初から最後まで立ち会うのはこれが初めて。バーテンダーが作る特製カクテルの特集だったので、まずどの素材を使ってカクテルを作るかを相談しながら撮影のアングルを決めていく。TV映りを考えてカクテルの彩り、夏向けの放映とのことで夏野菜や夏フルーツで、とのご注文。スイカのカクテルにしましょうとなったはいいが、今お店にない、とのことで私が買いにいってきました。早稲のミニスイカなので2000円以上してびっくり。そんなこんなで撮影を無事終えたのは4時間後。

そして今日みたオンエアーはたったの1分足らず。ひょえ〜!!テレビはそういうものだとは知っていながらも、自分が立ち会った時間の長さとそこに費やしたスタッフのエネルギーを思うと、なんとも複雑な気分。言ってみれば、いいとこどり、凝縮されたものがその1分の中にはつまっているのだろうけど、テレビ番組をつくるということがどれだけ時間と労力を費やしているのかをあらためて知らされたようで、色々と考えてしまった。一頭の牛を育てるのに何トンもの飼料が必要であるという話とどこか似てますね。似てないかな。

 
 
5月12日(金)
六本木のとあるレストランでワインの試飲とディナーの会に参加しました。大手ワインディーラーさんからご招待いただいたのでなんと3万円の代金がタダ。イタリアのワイナリーの数種類のワインを飲み比べ、それにあった一皿をいただく、という贅沢この上ないひととき。窓からは東京タワーが目の前にそびえたち、都内の夜景が一望できるダイニング。まわりをみると、実業家のようなお金を持っていそうな男性と連れの女性。なんとも別世界でございます。

料理も終盤にさしかかったころ、オークションが始まりました。今日飲んだワイン関連のヴィンテージものや、マグナムボトルなどが競売にかけられはじめました。すると、同じテーブルにいた取引先の男性が参加し始めました。競り落とすためではなく、価格を上げるために。その技は見事で、あっという間に10万で止まりそうだった価格が25万まで跳ね上がりました。人の欲をひっかける技をたくみに利用し、しかも自分は買わないですむようにちゃんと逃げる。感心しました。わずか数十秒の間に15万円も増えるなんて。私は初めてオークションというもののスリルを味わいました。いや〜楽しかった。

 
 
5月15日(月)

 前にも書いたけど、職場に一人だけどうしても嫌な人がいる。個人的に変な人と思うのはお互い勝手だけど、仕事の中で考えた方が違ったり、相反する考え方を持っているのは当たり前でそれを議論もあまりせずにその人自身と重ね合わせて考えてしまう人のようで、どうにもやりにくい。会議中にやりあっても、意見対立しても、ひとつの目的のためにやっているだけなのだから、対立は会議の中だけでいい話しなのに・・・。あ〜、仕事でこんな思いをするのは久しぶり。自分の中で基本的に誰とでもうまくやれるという自負があるのでそれも邪魔しているのかもしれない。家に帰ってもなんとなく心のどこかで引きずってしまっている自分がいる。さっきたまたまかけたCDがニューヨークでよく聴いていた曲で、それを聴いたら当時のことを少しづつ思いだした。そういえば、イーストーヴィレッジのすし屋で働いていたとき、同僚のインドネシア人がものすごい嫌なやつで私は彼に対してすごい憤慨していたのを思い出した。あの変な人に比べたら、今の会社の人はまだマシかな。。。なんて考えてみたりしている。あっ、そういえば、あの変なやつも、嫌だなと思ったら程なく、辞めていったんだった(笑)。

 
 
5月19日(金)

仕事で関わっているプロジェクトがらみで、超有名外国ブランドの3代目が来日していて、終日彼を間近で拝見する機会を得た。自分がこんなに近くで接していいのか!?と思うようなものすごい方なので最初はどうしようかと思ったが、とても穏やかでとっつきにくいオーラも発していないので、程なく、リラックスして接することができた。彼を見ていてとにかく感心したのは、「働き者」であるということだ。名声や肩書きにおぼれることなく、真摯に仕事に取り組む姿は素晴らしかった。代々受け継いでいる歴史を汚すことなく、使命を果たすことに真剣に向き合っていると感じた。

 
 
5月21日(日)

 私ときどき映画について後悔する。「どうしてもっと早くこの映画をみておかなかったんだろう」と。『モンドヴィーノ』は久しぶりにそう思わせてくれた映画だ。これはワインについての世界の実情や、製造者の哲学など示唆に富んだ内容でとても興味深い。

前に読んだ養老孟司さんの本の中に「人に対しても自然に対しても“手入れ”をするということが大切だ」みたいなことが書かれてあった。彼曰く、日本の昔からの自然とは、野放しの野生のことではなく、適度に手入れされた自然を指すのではないか、最近「手付かずの自然」がもてはやされることがあるが、これは本当によいものなのか?みたいなことを書いている。つまり、これだけ人間がはびこっている世界で、きまぐれで「手付かずの」場所を作ってみても、実はほかからのしわ寄せがここにも影響していて、ケアすべきことを怠ったただの「放置」に過ぎないのではないか、というような意味だと思います。それは人間にもあてはまり、生まれながらの自然な状態の子供に、親はその子に合った、「手入れ=教育やしつけ」をしてあげることで、その子は育っていくとのこと。(子供は親の所有物ではない、ともおっしゃっています)

この“手入れをする”という言葉がずっと気になっている。この映画を観て、またその言葉が頭をよぎった。「土地の手入れ」「ワインの手入れ」とはどんなことであり、歴史上どんな風に行われてきて、現代はどう行っているのか。「手入れ」の方法は千差万別であり、良し悪しではない。ワインを作るとき、現代の生物化学の叡智を結集した「手入れ」の方法もあれば、昔ながらの「手入れ」の方法もある。どちらが正しいとか正しくないとかではない。そういえば、うちの会社で扱っているワインにも扱おうとしている人にも2種類が存在する。考えてみれば世の中すべてのことにあてはまるなぁと感じた。そしてまた考えてしまった。自分にとって「手入れ」ってどんなことだろう

 

(6月へ続く)