●2003.12月(2)● ボードリヤール


ジャン・ボードリヤール(思想家・社会学者 1929〜)

フランスのランス生まれ。ジャーナリストからパリ大学ナンテール校社会学教授を経て、思想家活動に至る。1968年、処女作『物の体系』を発表し、1970年代に現代社会の記号論的分析で世界的に注目された。主な著書に『消費社会の神話と構造』('70年)、『誘惑の戦略』('79年)、『シミュラークルとシミュレーション』('81年)『アメリカ』('86年)、『湾岸戦争は起こらなかった』('91年)『完璧な犯罪』('95年)など。大衆社会状況を生産・消費の両面から分析する,独創的な社会論を展開。オリジナルとコピーの対立を超えるシミュレーションの時代の到来や、ヴァーチャル・リアリティーとクローンによる現実の消滅などを先駆的に論じて、「出来事としての思想」の提案者となる。9.11後の世界のゆくえについても積極的に発言。また、詩の創作、戯曲の翻訳、文芸評論、デザイン論など活躍の幅は広い。

●中尊寺の分析●

フランスを代表する社会学者のジャン・ボードリヤールは、最近では10月の来日講演で、早稲田大学の大隈小講堂を超満員にしたことで話題に。スーザン・ソンタグ、ノーム・チョムスキーと並んで、日本の大学生にも人気の現代思想家である。現代の思想を語るとしたら、もちろん“グローバリズム”を避けて通ることは出来ない。多くのそれ系の学者たちとは一線を画し、鋭く文明批評をするボードリヤール。74歳!という高齢にもかかわらず、ヴァーチャル・リアリティから湾岸戦争、イメージの暴力などまでガツンとかます。

最近で有名なのは、9.11テロ直後にルモンドに発表した論文「テロリズムへの想像力をはぐくんだのは超大国アメリカ自身だ」は、直後に言うのはキビチイ内容と思うけど、やっぱそうなんでしょうね。スーザン・ソンタグもそうだったけど、あれだけの被害者が出たので、こういうことを言うとバカな人たちからテロの加担をしていると攻撃を受ける。でもこれもグローバリゼーションは危険だという警告だったわけで、それについてはずっと学者たちは指摘してきているのだ。ボードリヤールは、「普遍的な共通の価値観を押し付けると危険で、ヨーロッパは過去においてそれで失敗しているから、今みんな個人主義だ」と言う。ですよね〜。

フセインは捕まったけど、小泉さんは自衛隊派遣をやめない。アメリカに気に入られようとしているだけで、これは国際社会の一員としての協力なんかじゃない。この件に関してはフランスはもちろん、カナダ、韓国、ドイツ、ロシア、メキシコはシカトぶっこいているんだからね。どの国もアメリカに依存していたり、利害関係が大きい国ばかりだ。でも派兵については加担しないんだから。それなのに日本は情けないなあ。

さて、グローバリズムは終わったというけれど、私が「こりゃあグローバリズム(世界単一価値)だ!」と感じるのはコピー商品を見る時。NYのチャイナタウンのニセ・ブランド物屋へ行くとグッチ、ヴィトン、ディオール、フェンディといっぱい偽物が並んでいるけど、そこにもハヤリがあって、今ならヴィトンのペガス(キャリー)が人気。それは本店と同じ。7年前は同じ店でもシャネルのポーチが幅をとっていた。ここまでニセのトレンドも細かくて本物と一緒だと(当たり前か)、この価値観の浸透に「グローバリズムは一生終わらない!」と溜息が出るのであった。