それはそれは、静かな日々でございました。そして、退屈な日々でもございました。風邪をひいてしまったのでありますが、けしてそれだけではございません。私(わたくし)、携帯を壊してしまったのであります。
そうなのよ、携帯が壊れたのよ。正しく言えば、壊されたの。車に轢かれてしまったのだ。スクランブルの信号が変わろうとしていたから、ダッシュしたらポケットから落ちてしまったのだ。しかも落とした事に気がつかなくて人に教えてもらったんだけど、その時すでに信号は赤。ほんの3.4mのところに落ちているんだけど、拾いに行けなかった。オロオロする私と一緒になって、周りの人がそこに携帯が落ちているとゼスチャーで示してくれたりしたんだけど、直進してきた3台目の車がはねた。でもかすった程度に見えたから一縷の望みを託していたんだけど、その後のバスがグチャとつぶした。ちゃんとグチャっという音がしたんだから。もう、バスなんか乗らない!つぶれてしまった携帯を拾いに行くのが、めちゃくちゃ恥ずかしかった。「あ〜あ」という声を背に拾い上げてみると、さっきまで親切だった人とかが今度は一緒に覗いているんだもん。こんな時ってどんな顔をすればいいの? まさか泣き出すわけにいかないじゃない。きっぱり諦めたような顔をしたつもりだったけど。かなり動揺してたみたいで、慌てて家に電話してしまった。バカみたい。だってさ、ポケットに入れていたんだって、クライアントから電話が入ることになっていたからなのよ。それなのに、それなのに、家に電話しているんだもんね。クライアントは、何回かけても話し中だったと言っていたわ。ふ〜ん、そんなもんかななんて思っていたけど後日、機種変更する時になって電話代の事が気になった。お店の人も他人事で、「請求書がくればわかりますよ」だって。
そしてとうとう今日、新しい携帯がやってきた。とってもハッピーよ。だってもう、誰かがデートに誘ってくれたんじゃないかしら、とか悩まなくていいもんね。ただし、このどさくさに紛れて部長が「番号変わったの? 何番だっけ」と聞いてくるのが、うざい。教えていい人と、そうでない人がいることぐらいわかってよ。そう、クライアントでも教えている人がいるといるのに、部長には今だに番号を教えていなかったのだ。きつ〜い箝口令をひいてあったけど、口を割る人間がでてくるかもしれない。