●2001.10月● 我慢、我慢の日々ですね。
 
10月3日(水)

お昼に何を食べたかと聞かれたので、正直にハンバーグと答えただけで思いっきりひかれてしまった。Y君なんて憐れんだような顔をするし、M子なんて距離をおこうとしたのか椅子をずらすのよ。ハンバーグ食べただけで、そんな態度を取られてもね、困るわよ。みんな牛肉食べないつもりなの? 焼肉に行かないんだ。ヨーグルトもチーズも食べないつもりなんだ。カフェオレも飲まないってことだよね。和食も嫌いじゃないけれど、コーヒーもブラックで飲んで精進料理を毎日食べるなんてことできるわけないじゃない。ピザだってグラタンだって、ハンバーガーも我慢するんだ。「そこまで大げさに考えてはいないよ」というけれど、いつまでという期限もないのにやみくもに、自衛でそこまでできない。Y君がいうには、狂牛病って人が感染するとヤコブ病になるだの、脳がスポンジ状になるから痴呆症と同じだのってうるさいの。そういわれれば最近、人の名前やお店の名前がなかなか口にでてこないことがよくある。漢字だって、人前で書けないこともある。知らないうちに感染していたのかなって、内心の動揺を隠してみたもののしばらくは牛肉はやめとこうなんて、いきなりトーンダウンしてしまった。家に帰れば、イギリスで多分お肉も食べてきた両親だっているんだもん。家族揃って狂牛病に感染していないなんて、言い切れないよね。しばらくお肉は控えた方がいいというアドバイスはありがたいけれど、すでに感染していたらどうするの? 「たとえ君が感染しても一生めんどうはみるよ」といってくれる方が1000倍は、うれしいかも。人の心配をしてくれるなら、きっちりそこまでしてほしいものです。誰でもいいとは言わないまでも、Y君ぐらい言ってくれてもいいんじゃないかな。だってもうすぐ、お約束の日なんだもん。

 
 
10月12日(金)

ようやく一息つけて、さて少しのんびりするかと思っていた矢先に風邪をひいてしまったみたい。こうやって緊張が解けたときが危ないのよ。友達にでも会おうか、だれか合コンにでも誘ってくれないかな、それとも勝負するかなんてボケッと考え出すと、体がお休みを要求するみたい。せっかく飲みにいこうと誘われたのに、だるくてパスしてしまった。帰りにコンビニで風邪に備えて、ビタミンCとアイスとチョコレートを買おうとしてレジに並んでいたの。そしたら前の男の子が、当然のようにお釣りを募金箱に入れたのだ。まだ小学生の男の子が当然のことのようによ! 100円で買った駄菓子のお釣りだから額としては大きくないんだけれど、自分のお小遣いをそうやってさりげなく募金するなんて、なかなかできないよね。目の前で見ていて感動してしまった。いい子だな、偉いな〜と。アルバイトらしき店員の男の子も同じだったみたい。ちゃんと「ありがとうがざいます」ってうわずった声でいっていたもん。その子がね、振り返ってわかったんだけれど、それがまたかわいいの。あどけなくて、賢そうで美形なのよ。さっさとレジをすませて、後をつけてしまおうかと思ったくらい。私もお釣りをもらったけれど、募金箱が目に入っただけ。だって小学生の真似するの、格好悪かったんだもん。今度コンビニにいった時は、さりげなく募金しようっと。あんな子が、すくすくと成長したらいい男になるよ、絶対に。それまで待てないし、年令差が悲しすぎる。でもお父さんなら…とか、余計な想像を働かせてしまった。本当に今度は、募金するぞ! 来週は牛肉食べるぞ!

 
 
10月18日(木)
毎日、やたらと机の整理やバッグの中を点検してしまう。メールや電話もいつもより、少しだけ丁寧になっている。なぜって、理由はいくつもある。もしかしたらどこかで炭疽菌の被害に遭ってしまうかもしれない、もしかしたら狂牛病が発病してしまうかもしれない。一番の理由は、こないだ大迷惑をかけられた会社の社員に恨まれているかもしれないから。トコトン文句というか正当な言い訳を言わしてもらったけれど、相手がどう思っているかはわからないものね。私一人だけじゃなくて部長やみんなで糾弾したんだけれど、まあ一番被害にあったというか状況がわかっているのは、私じゃない。どうしても発言も多いし、感情的にもなるものね。社長は忙しい人で、社員を信用していたから寝耳に水だったわけ。かなり申し訳ないという気持ちでいっぱいだったようだけど、ショックだったのも事実みたい。もっと早くこんな嫌な話にはケリをつけたかったんだけど、みんなのスケジュールで今日までのびのびになっていたの。

いろいろ思い出したら、いろんなことがフラッシュバックしてきて辛かったわ。でも本当にヤバイのは、これからかもしれない。いろんな人がいるものね。だからしばらく用心するんだ。ただのヒステリー女だと思われたくないもの。人に責任を押し付ける人間だとも思われたくないもの。言いたいことは言ったんだから、あとはまた頑張ろうっと

 
 
10月29日(月)

母親と妹を取るか、友達を取るかで悩んだ結果、友達を選択したの。それ自体間違いではなかったけれど、結果的に良かったのかどうかはわからない。34歳の誕生日なんて、そんなものです。土曜日は友達との待ち合わせより2時間早く出かけて、指輪を見ている時は幸せだったの。でもお茶をしに入った喫茶店で、後に入ってきたカップルを見てしまってから心境の変化が。だってそのカップルの男は、むかしむかしのボーイフレンドだったんだもん。あ〜あ。偶然とはいえ、なにも誕生日にその人に遭遇しなくたっていいよね。おかげで彼女ウオッチングはできたけど、いまさらそれがどうしたっていうものでしょう。おまけにこっちは、話題も提供できない女同士。まさか私の誕生日を覚えているはずはないだろうけれど、なんかさ、切なさ爆発よ。お互いに顔を合わせないように座ったんだけれど、その人が店を出るまでなんだか落ち着かなかったな。

せっかくのケーキも味がしなかった。たまたま今日、腐っているY君を勇気付けてあげようと思っておもしろおかしく話してあげたら、大爆笑されてしまった。笑わせてもらったからカラオケをおごってくれるんだって。たまにはカラオケもいいけれど、今日の今日じゃ嫌なの。すごく暇で寂しいみたいじゃない。

 

(11月へ続く)