●2002.4月● 不安でいっぱい。
 
4月1日(月)

今日から、新しい年度のスタートですね。これは新入社員のういういしさとは対照的に、私の在籍年数がまた一年増えたということなのよね。4月ほど年齢を意識させられることはないかも。だって、何一つわからないのってかわいいじゃない。なんだかおっさんみたいだ。若い女の子は、ただ若いというだけで充分だというのとあまり変わらないな。何か教えればその通りにするんだよ。もしかしたら、たいしたことでもないことでも尊敬の眼差しで見つめられるのよ。いいよね、お得だよね、若いって。ところが何年も何年も会社にいると、異動したくらいではどこまで親切にしてもらえるかわからない。だんだん不安になってきた。今度の部の噂話なんか聞くと、心配でたまらない。だって最初からうまくいくはずないものね。

今日、統合したみずほだって混乱しているじゃない。お財布に783円しかなくて銀行にいったら、キャッシュディスペンサーは人の行列だったもの。行員の人は、大きな声を張上げているしお客さんはみんなイライラしているし、殺気だっていて怖かったもの。みずほだってうまくいかないんだよ。私が心配するのは、当然でしょう。それなのにY君ったら、不安を感じている気配もなくてなんだか余裕なの。「向こうに行ってから考えればいいじゃん」だって。確かにそうよね。今から心配していたら、しわだらけになっちゃうよね。

 
 
4月9日(火)

とうとう、加藤紘一も辞任しましたね。辞めていく政治家や、首の皮一枚でつながっている政治家のなんと多いことか。このままいったら、いま松下政経塾にいっている若い人しか政治家になれないんじゃないの。いつも不思議に思うのは、政治家は辞任しても選挙で落選しても、なんとか生活していけるところ。生活苦にあえいでいなそうなんだもの。よっぽどお金を貯めこんでいるのかしら。私なんて異動が決まってからというもの、目の前を書類や話が素通りするたびに、落ち込んでいるというのに。自分が、その場にいてもいなくてもいいような存在に思えて辛いわ。そうかといって新しい部に出入りするのも、気が退けるしさ、困ったものよ。

こういう時にパチンコなんていくから、とんでもなく貧乏になってしまった。しかも家に帰ると母親からは「今日はお土産ないの?」と聞かれて、めんどう。いちいち聞かなくても帰ったときの格好を見ればわかるのに。楽しみにしているようだから今度は自分で買って帰るけれど、あれは単純にお土産を期待しているのか、それともお土産を持たせてくれた人がいるんじゃないかと考えているのか、どっちなんだろう。

 
 
4月16日(火)
じっとしているのも、楽じゃないわね。お愛想笑いも、肩が凝るのよね。慣れない職場だけど、とくに気を遣っているわけでもないのにどうしてこんなに疲れるのだろう。新入社員の時を思い出して、彼らに同情しちゃうな。とにかく人の名前を覚える。どんな立場の人で、どういう人なのかを把握する。それからクライアントの事情などを考えるだけで、しんどいものがある。まあ、新しい人たちと出会って、新しい商品を担当するのは楽しいことでもあるんだけれど、やっぱり慣れるまでが大変よね。知らないことばかりだからといって、なんでも言いなりになるわけにもいかないし、そうかといって自分の考えで動くわけにはまだまだいかないものね。しばらくは、おとなしくしているつもりよ。でも、このしばらくというのが曲者なのよね。いつまでもおとなしくしていると、気が利かないだのやる気がないだのと思われるでしょう。そうかといってよくわかりもしないで暴走すると、生意気だの協調性がないだのといわれそうだし、とにかく迷惑をかけることになりがち。ああ、タイミングが難しいわね。肝心なのは、目立ちすぎないように静かにしていることよね!
 
 
4月30日(火)

相変わらず気苦労の多い日々です。会社ではもちろん、家でも、こないだお食事をしたテレビ局関係者のKさんのことも。家のことでは、法事があったのよ。めったに顔を合わせない親戚が集まった法事の後の会食が、いけなかったわ。昼間からビールなんか飲むから、叔父や叔母たちの口も軽くなるのよね。出席していない親戚の近況報告のあとは、お決まりのパターンよ。私なんか、ほんとうにいいカモよ。妹はさっさと結婚しているし子供がいるから問題ないけれど、結婚はしていないしもちろん子供もいない私はたまったものではありません。「どうして結婚しないんだ」「彼氏はいるのか」と、うるさいこと。適当にはぐらかすんだけれど、酔っ払いだから何度も同じことを蒸し返す。おまけに「どんなタイプがいいんだ」とか、まさに聞きたい放題。根掘り葉掘り聞き出しておいて、あとはご自分でなんとかしてくださいはないよね。母親と向かい合わせに座っていたんだけれど、だんだんと顔がひきつってきて恐ろしかった

しかも先週はHさんに誘われてコンサートに行って、お疲れだったのよ。そのコンサートというのがHさんの知り合いが出演しているというものだったのです。深く考えずに行ってしまったのよ。そのコンサートというのが、わりとその出演者の関係者や熱烈なファンの人たちが多いみたいだったの。身内の人が楽しみにしているようなものですね。ところがなんのイメージも持たず予備知識もないままいってしまったので、コメントのしようがなくて。Hさんとしては、それがすごくおもしろくなかったみたいなの。帰りに食事だけはしたんだけれど、会話もポツリポツリって感じ。だいいち入ったお店が、下町の中華屋さんよ。色気もムードも、あったもんじゃないわ。せめてもの救いは、いまの部が悪いところではなさそうなことかな。

 

(5月へ続く)