●2002.6月● 燃え尽き症候群だ!
 
6月5日(水)

もう、時間が気になって仕方がない一日でした。観戦は会社でみんな集まって見ているから、一人のときのように気楽ではなかったかな。でも時間が経つに従って、みんなも熱くなっていたな。大きな野次とか飛ばされると、「この人ってこんな人だったんだ」というのもわかって面白かった。でも空席がたくさんあったことと、3点目が無効なのかがわからない。あんなに攻めてせっかくゴールしたのに、納得いかないよね。審判に詰め寄っても判定は変わらないんだよ、と言われても、もっと抗議してもいいんじゃないのかな。初戦で引き分けよりも勝ち点があったほうが、余裕も出るのに残念。ホームグランドってお得じゃないの? 初めっからお得を狙っていたら、情けないしこの先は望めないけれど、どうしてファウルなのか説明ぐらいあってもいいと思うわ。

ほかの人たちは、済んでしまったことは仕方がないという感じのようだった。みんな一緒にTVを見ていた時は同士のような一体感があったのに、ハイライトシーンを見たころから、ぽつりぽつりと席に戻って仕事に取り掛かっているのには、興ざめ。そんなに切り替えの早い人ばかりだとつまらないよ。ここで評価できたのはうちの部長だけかな。TVを見終えてから電話をしていたのが、聞こえてしまったのだ。お家に電話をかけて「見た? ちゃんと見た?」なんてやっているのよ。なんだか微笑ましくなってしまった。誰かに言いたいけれど、部内では言わないようにしようっと。

 
 
6月12日(水)

毎日気もそぞろで、それでいて緊張していて、でもなんだか張り切ってしまう。ワールドカップの威力というのは、すごいものがありますね。初戦の時は、中山美穂が結婚しても「そう結婚したの、やっぱりね」という感じで、悪いけれど今は構っていられないの状態だったけれど、今回は違う。ロシア戦が終わって2日経っているというのもあるけれど、ナンシー関が死んでしまったんですもの。ナンシー関って、好きだったのよね。あの消しゴム版画よりも、彼女のTV批評のエッセイが好きだった。視聴率にかかわらずTVを見ていること、遠慮や配慮を感じさせないコメントがよかったの。この人はTVの中の人に、あくまで個人の心に浮かんだことをそのまま書き綴っていると思わせるところがすごかった。どの紙面に連載しているかではなく、TVとは直接向き合っていない私が傍観者となり、評論家としてや個人の趣味で書いていたからね。片平なぎさが昼メロや旅番組で頑張っているのを知ったのも、旬のタレントをばっさり切り捨てるのも気持ちがよかったのに、本当に残念。原稿の書き溜めなんてしていないようだから、ぷっつりいなくなってしまうのよね。

こうしていなくなってから改めて存在を認めさせるもの、そして今その存在から目が離せないといえばどうしても日本代表よね。いつもはほとんど見たことのないサッカーなのに、戸田と鈴木のファンになってしまった。楢崎もいいけれど、トルシエの喜んでいる姿を見てほっとした。稲本は、急に大人になってしまったみたい。本人の意志でもあるんだろうけれど、どうもサッカーを取り巻く環境や人々によって大人にさせられたような気もする。自由に感情表現をさせてあげたいような、鼻につくようなちょっと複雑なところかな。

 
 
6月17日(月)

目は赤く髪はびわのようないでたちで、今週をスタートさせてしまった。目が赤いのは寝不足。髪がびわのようにオレンジ色になっているのはカラーリングしたから。なにも週の初めからこんなつもりじゃなかったのだ。そもそも自分でカラーリングしようなどと思い立ったのが、すべての間違いの元だった。断っておくけど、戸田の髪に感化されて奇抜な色にしようなどと思ったんじゃないわよ。単に少し前からある植物性の染料から、いろいろな色が出たので興味をもってしまったのだ。でも、買ってから気づいたけれどその染料には準備が必要だったわけ。カラーリングしようとしたのが、日曜日の夜の10時。いざ髪に塗りたくりだしたのが、1時すぎ。でもこの時はそれでも、2時半にはすべてが終わっているはずだったのよ。それが…すべてが終わったのは、外もすっかり明るい5時半でした。鳥のさえずりを、こんなに腹立たしい思いで聞くことになるとは夢にも思わなかったわ。まず髪の根元から均等に塗っていくことの難しさに泣きました。それからすぐ私には無理だと悟ったんだけど、すでに色をのせてしまっている部分のことを考えて泣きました。そして、2時間以上も両手を上げ下げすることの辛さに泣きました。極めつけは、イメージしていた色との違いに泣きました。あぁ、自分でさっさと思い通りにカラーリングできる人が羨ましい。今まで美容院まかせにしていたのは、正しかったということね。よ〜くわかった一件でした。やっぱりプロはすごいんだ。14日のチュニジア戦でも、日本のプロたちはすばらしかったもんね。

 
 
6月21日(金)

もう3日も経つのに、すっかり気落ちしているわ。持てる力を出し切って戦ったようには思えなかったものね。こんな時代に神風なんて吹かないのね。韓国の活躍をすばらしいとは思うけれど、これが日本だったらとあさましい勝手な妄想にとらわれる自分にも嫌気がさしているんです。

そうしてへこんでいるところに、クライアントの人から個人的に食事にいこうとかなり強気に誘われて、またまたへこんでしまった。日本が敗退して気落ちしているところだから、楽しそうなイベントを提案すれば喜んでついて来ると思っているのかしら? 代理店だから、断れないはずだと考えているのかしら? 金曜日でも予定はないはずだと見られているのかしら? どう思おうと勝手だけど、弱っている女に付け込まれたような気がする。もしかしたら、まだ慣れていないから声をかけてくれたのかもしれないし、もっと簡単でただ軽い気持ちで食事でもと誘ってくれたのかもしれないのはわかっているのよ。でも、どうしてもそんな気分になれないだけ。まだ試合が残っているけれど、私はすっかり燃え尽き症候群なんですもの。これからの9日間をどう過ごせばいいんだろう。

 
 
6月30日(日)

ブラジルは強いね。カーンを応援していたので、がっかり。試合後の孤高の人カーンを見たら、つらくなってしまった。カーンはいい仕事をしたよね。もっとDFの人に頑張ってほしかったな。何にもわからずに見ていた一ヶ月だったけれど、サッカーの楽しさや難しさがほんの少しだけわかったような気がする。観戦していただけでもこんなに意気消沈しているんだから、ブラジル選手以外の選手たちはどのくらいこたえているのかしら? 心配だ。

 

(7月へ続く)