●2002.9月● おつきあいは、難しい。
 
9月7日(土)

秋の長雨でみんな気分が沈んでいるのかと思っていたら、最高に幸せを感じている人がいるものなのね。まさかそれが、宇多田ヒカルだとは思わなかったわ。まだ19才でしょ。そんなに早く結婚なんてしなくてもよさそうなものなのにさ。相手がカメラマンといわれてもピンとこないし、宇多田ヒカルも日本にいないから結婚報道も距離感があるな。お母さんの藤圭子も結婚が早かったから、人気に影響しないと知っているのかしら。藤圭子の初めの結婚を覚えている自分というのも、怖いものがあるよ。もたもたしているうちに宇多田ヒカルに子供ができてなんてことになるのかしら。ああ嫌だ嫌だ。だってみんな自分ではない誰かの話なんだもん。このままだと、生涯自分が主役になることがあるのかないのか、わからないのよ。そのうちに気がつくと、自分の半分しか生きていない子たちが結婚しているんだわ。きっと。

今日は、打ち合わせをしようということで出社したのに話がまとまらなかったら、なんだか一日を無駄にした気分なの。なんか損したようで、おもしろくないのよね。こんなことだったら、惰眠をむさぼりたかったわ。

 
 
9月12日(木)

困った。調査にかけていたものの結果が、私たちの読みとは違う形で出てきてしまったのだ。このままクライアントに持っていくことは、できないでしょ。どうするかというと、方法は二つしかない。今週中に企画を追加して月曜日に提出するか、結果を改ざんするしかないのだ。なにもすべての人が、私たちの考えている方向に同調してくれるとは思ってもいなかったけれど、こうも方向性の違うものの数字がいいとどうしようもない。質問の仕方が良くなかったのかとか、コンテが伝わりきらなかったのかと考えてしまうわ。残念だけど事実を事実として受け止めて、またクリエーティブにお願いするしかないのよね。あ〜気が重いな。みんなの合意で進めてきたのに、こんな結果が出るんだもん。

伝え聞くところによると、私たちの中では結果が悪くてもその結果をふまえて企画の変更案を出したり追加したりするけれど、調査結果を改ざんしてしまう代理店もあるんだって。都合よく数字をさわったり、質問を変えたりするなら、調査なんてかけなくてもいいのに。卑怯だぞ。バレたら信用なくすのにな。でも、月曜までの作業を考えるとほんのちょっとだけ気楽でいいな、と思ってしまう。悪魔の囁きってやつですね。こんな時代ですもの、いつ、いい加減なことしている代理店がつらい目に遭うのか、楽しみにさせてもらうことにします。

 
 
9月18日(水)

秋になると、涼しくなって朝も夜も眠くてどうしようもない。目覚ましが鳴ってすぐに起き上がれる日は、自分でも立派だと思ってしまう。二度目で起きる日はさすが会社員と思い、三度目の時は、休みたい気持ちでいっぱい。その日のスケジュールを思い出しているもんね。

というわけで、今朝はつらかったな。先週末からの疲れはたまっているし、昨夜はクライアントとのお食事で気疲れしてしまった。O君も同席していたけれど、一緒に仕事をまとめたという感激は、時間と共に減っていて、いまではただのお得意さんの一人でしかないのよね。個人的に食事にでも行っていれば、もう少し話も違っていたかもしれないのに。でも、こんなものよね、人とのおつきあいって。話がパッとまとまれば親しくなれたりするけれど、うまく進展しない時もある。正直いってO君とは、そんな程度なのよ。かわいい弟分なのね。

個人レベルでもつきあいって難しいものなのに、小泉首相の訪朝は問題点が多くて大変だな。歓迎の旗も垂れ幕もないうえに、会談前には待たされる。小泉首相の憮然とした態度は、大切なことですよね。拉致問題がここまで明らかにされたことで、これからの問題も出てくるのに、もう来月からは正常化交渉に向けて動き出すなんて大変すぎるよね。引き上げられた不審船の問題だってあるのに、どうなるんだろう。やっぱりおつきあいって、どこでも難しいものなんだな。

 
 
9月27日(金)

風邪をひいているらしい。その風邪は、秋だというのに夏風邪と言うらしい。言うらしいと表現していることで、風邪だと認めたくない気持ちと夏風邪だと信じられない気持ちをわかってほしいのだ。喉が腫れていて関節も痛いのが、もう一週間も続いているのに、ちっとも良くならない。それなのに夏風邪なんて診断されると、すごく間抜け。おまけに次の夏まで治らないのではないかと不安になるじゃない。

こんな不安な気持ちを抱えていてはいけないと、今日は同期二人と食事をしてきた。食事の前に誘って「リターナー」を観たのだ。これで観客動員数を二人増やしたぞ。そんな私のいじらしさが通じたのか、同期に感動されてしまった。ひたむきさと情熱に感動したって。そして感動を通り越して、今では尊敬してくれるんだって。これは金城武くんに対するコメントでもなく映画に対するコメントでもなく、私に向けられたものだった。もちろん、武くんは格好よくて映画はおもしろいのよ。でも武くんを思う気持ちに尊敬したんだって。うざそうに、そう言われてもねぇ。友達なのにわかってくれないのね。どうしてなんだ

 

(10月へ続く)