●1997.5月● 愛それとも友情
5月7日(水)

少しダイエットをしようかな。別に、こないだの夜があったか らじゃないんだけれど、やわらかい肌とだぶついている肌って、 全く別物なのよね。近頃お風呂で、自分のお腹や太ももをまとも に見れない私は、かなり危ない。薄着になる季節だし、男ができ てから慌てても間に合わないしね。そういえばシンディ・クロフ ォードのエクササイズビデオをかったのに、まだ一度も見ていな いんだわ。食べたいものを我慢するのはイヤだから、ギムリンド で少しだけ頑張ってみよう。

5月16日(金)

ありそうにない幸運というのは、めったな事ではありえないの に、ありそうにない不運というのは、けっこう高い確率で遭遇し てしまうものね。しかも、同じ会社生活を送っていても、その中 で不運に見舞われやすい人がいるのはなぜかしら…。

 きのうのクライアントの担当者は、ひどかった。今までさんざ ん話し合いながら進めてきた次の広告キャンペーンなのに、自分 の上司の一言で平気でうちの会社を裏切る。おまけに名指しで、 うちのY君のせいにした。役員の前で必死に自分の立場を取り繕 うクライアントの担当者を、誰もどうすることもできなかった。 部長も次長も私も。嵐が過ぎ去るのを、ひたすら待つしか道はな かった。そっと隣のY君を見ると、机の上に置かれたタレントの 資料を見つめてうつむいている。会社に戻ってからも、みんな妙 によそよそしい。そりゃあそうよね、この世の終わりみたいな顔 しているY君にかける言葉なんて見つからない。

 その夜お酒を飲みに行っただけなのに、あんな事になるなん て…。Y君は同じ部の後輩なんだもん。いつもは明るくて、私に ブルー入っている時なんかさりげなく元気づけてくれる、いいヤ ツなのよ。きのうは、私もどうかしていたの。つきあっているわ けでもないのに、こんな事ってはじめて。同情というのとは違う、 と思っているんだけどなぁ。あの時、ただ見ているだけで何もで きない自分が、イヤだったの。言葉にできない、強さとか弱さと か悲しさとかのいろんな感情を、伝えたかった。抱きしめてあげ たいって、ごく自然に思った。ずっと社内の人間とは安易にそん な事にならない、って思っていたんだけど…。

 不思議なことに今日、Y君と顔を合わせてもけっこう平気でい られた。男とか女とかを超えて、同じ感覚になれるのは、それし かなかったような気が、今でもしてる。彼も同じ気持ちだった、 と思いたい。それとも軽い女だと思われちゃったのかな。とにか く、後悔はしていない、今のところ。

5月23日(金)
今日エレベーターを待っていたら、降りてきたY君が話しかけ てきた。「さっき部長から言われたんだけど、あのクライアント の担当外されました。」だって。「その方がよかったじゃない。 」と答えたら彼は少し寂しそうに笑った。いかにも会社らしいや り方だけど、その方が本人もせいせいするっていうもんよ、ほん とに。

(6月へ続く)