●1997.10月● Can You Celebrate?
10月9日(木)

私ったら今日、会社で怒鳴り散らしてしまったの。「資料を揃え ておいてくださいよ」という後輩のひとことに、積もり積もった 怒りがついに爆発してしまって…。自分でもどこからこんな大き な声が出るんだろうと、驚いてしまったほど。しかもその声に、 迫力があるんだ。もちろんこんな事、入社以来はじめてよ。でも ね、大きな声で思いっきり言いたいこと言ったら、何かがフッ切 れた。ずっと我慢していた何かが…。

このところ、想像を絶する忙しさだったのよ。よくもこんなにや る事があるもんだと感心するくらい。25時26時なんてザラ。27 時や28時だってある。おまけに、土日も出っぱなし。肌なんて、 とっくの昔にボロボロになっているわ、服なんてその辺にあるも のをただ着ているだけの話。明日からの3連休だって、丸々2日は 仕事なんですからね。それなのにあの若造ったら、私が見ないふ り、聞かないふりしていたのをいい事に、なんでもかんでも私に 押し付けようとするのよ。こないだの土曜日だって、連絡も入れ ず2時間も遅刻してくるわ、そのくせ食事はゴチだと思っている ようなヤツなのよ。誰がどう見たって、とっくにこの激務に限界 は超えているのよ。しかも黙って馬鹿タレの面倒だってみてきた というのに…。

一瞬、あたりが凍り付いてその後は、まるで恐ろしいものを見る ように私のこと見ているのよ、みんなで。いいの、いいの、期待 していたわけじゃないんだから。でも、こうして何度も思い返し ていると、すごくみじめな気持ちになってきちゃった。うまく言 い表せない複雑な気分。たぶん、「今月で30才になる」という のが影響しているのかもしれない。しばらく冷静に考えてみよう。

10月14日(火)

気持ちいい秋晴れが続いているというのに、私は残業続き。そう、 仕事はちっとも楽になっていないわ。多少、いたわりの言葉をか けられるようになったくらいかな。みんなと少し疎遠になったと いうのに、私の耳にまで例のY君に「女ができた」話が聞こえて きた。何もこんな時に、そんな話なんて聞きたくなかったのに…。 もちろん、Y君とどうにかなろうなんて考えてはいなかったけど、 世の中で私だけ独りぼっちになったみたいでショック。いつの間 にか、Y君が心の支えになっていたのかもしれない。

10月23日(木)

いよいよ30才のバースデーまであと3日という日に、安室が結婚 しちゃった。20才でよ!もうカンベンしてよ。私と10才も違う、 うら若き大スターがそんな事でいいの?!生きていく自信なくし たわ。もろもろ辛いことばかりの私は、寸暇を惜しんで服を買い まくり、お酒を飲んで、自分を忘れようとしているに、安室ちゃ ん、それはないでしょう。もう私が私でなくなったら、安室ちゃ ん、あなたのせいだからね。

10月27日(月)

とうとう30才になってしまった。あんなに恐れていた30才に。 その一方で、昨日と今日で何も変わっていないじゃないという気 もする。毎日が昨日の延長線よなんて考えても、ここ数日、正直 言って相当ナーバスになってました。男と別れてから1年以上経 っているし、おまけにこのところ仕事はキツイ。それに引き替え、 Y君だって安室だって、他の人がみんな幸せそうなんだもん。こ のままでは、イチャついているカップルや小さな子供をジッと睨 みつけるオババになりそうな自分が怖い。友達なんてこの先どう なるかわからないんだし、気がついたら仕事しかなくて独りぼっ ちなんて、絶対イヤ!!

そう、私だって誰かに愛されたい。誰かに必要とされたい。守っ てほしいし、いたわってほしい。仕事にしても、いま辞めるわけ にいかないから働いているところもあるんだし、どうせ働くなら もう少し頑張ってみようかなという程度のことなのよ。なにも一 生を仕事に捧げたわけじゃないし、管理職を目指しているわけで もない。第一、仕事が忙しくても、男は恋愛して結婚しているじ ゃない!忙しくしているからって、仕事に生きますみたいに勝手 に思われたら大変。女にはいろんな選択肢があるから難しいんだ けれど、とにかくそろそろ自分のビジョンをしっかりと持つ必要 があるわね。こんなことをつらつら考えながら、30才の誕生日、 ひとりで夜の銀座をほっつき歩いてしまった。そして結論。これ からは、もっと自分のプライベートを充実させなきゃ。ドンドン 恋をする30才になってやる!


(11月へ続く)