●1998.4月● 桜の下の憂鬱
4月1日(水)

仕事にブチ切れてからはや半年、見ない・聞かない・わからないで通してきたんだけど…あーあ、やっぱり知らぬ存ぜぬでは済まなかった。自分で選んだ方策とはいえ、どうも私の性分に合っていなかったみたい。見ない・聞かない・わからないで過ごすのって、思っていたよりはずっと大変だった。毎日、肩身のせまい思いをしたわ。なるべく目立たないように気を遣い、発言は控える。グチはこぼさず、帰りはそっと帰る、などなど…。

これが、けっこうストレスになった。すっごい楽して、元気にお金だけもらえると思っていたけど、世の中そう簡単にはいかない。まず、自分が腐る。だから、いじける。そして、疲れる。それでも、未来の幸せのため恋のためならと、こうして自分の時間を確保しようとしたわ。あぁ、それなのに、それなのに……。

その仕事は、私は関わっていなかった仕事だったのよ、始めは。まあ大変そうぐらいだったのがだんだん、エー何やっているんだになって、ハタで聞いているのも辛くなってきた。制作部門もマーケティング部門もセールスプロモーション部門も、みんながパニクッている。その原因が我らが営業の後輩約2名。もちろん、はじめは知らん顔していたわよ。人の仕事に首をつっこむなんてでしゃばったマネはしたくもないし、されたくもない。でも、そのうち「どうなっているんだ」が、私のところまでやってくるようになってしまったのでした。忙しければ逃げられたのに、いかんせん私ヒマじゃない?こうしてトラブルに巻き込まれてゆくのを、拒みはしなかったため、再びあわただしい日々を迎えいれてしまったわけだ。だからねM君、何回 Telくれても帰れないんです,私。

4月10日(金)

桜が咲いてから、数日。やっと目の前で見ることができました。雨が降ったりしたけど、どうにか散らずに咲いていました。一年ぶりの桜と M君。そして2週間ぶりの プライベートタイム。盛り上がる要素、勢揃い。でしょ? あぁ、それなのに……。

まず桜。桜って、遠くから見るとほんときれいなんだけど、近づけば近づくほど花見をしていると実感できないものよね。毎年、花見に来て思いだすけれど、観賞するにはボリュームがなさすぎる花だと思わない?それに桜を見るとなぜか懐古的になるのよね。昔は、あの時は、ばかりでHappyな気分になれないの。私と桜は。

加えてM君。これまた桜を愛でる男ではないのよね、軽すぎて。頭にくるほど、桜の木の下が全然似合わない。コイツ、私の知っている日本人じゃないと思ってしまいました。魔性の桜もM君が相手じゃ、形無しよね。目下、彼の悩みは新人の教育係を任されそうな事、だそうです。私は、話をするよりもロマンチックするよりも、食べまくってご帰宅よ。こんなに疲れている私に残されているのは、食欲だけなのね。悪い、とは思っているけど。

4月13日(月)

帰ってきたぞー、隣の部の男が新婚旅行のハワイから。2週間ぶりに、誰にでもわかるように、まっ黒になって。そして誰彼となく話しかける。僕の幸せ話を聞いて欲しくて仕方がないといったところ。オイオイ、誰も詮索もしてないんだよ。

 だいたい郷ひろみと二谷友里恵が離婚したというのに、誰がアンタの結婚話なんか聞くの?どうせなら幸せな話より、不幸な話の方がおもしろいし、もともとアンタには、興味がないんだってば。妙に明るかったり、妙に落ち込んでたりのどちらかで、ほんと怖いのよ。前方10メートルにいるだけで、ハイなのかローなのかわかるんだから。まして私生活なんて、怖すぎて聞けない。確かに結婚する女がいたというには驚きだけど、結婚がうれしくてたまらないというのも驚きよ。みんな口には出さないけれど、このままアンタの幸せが続くはずないと思っているわよ、絶対。まあ、時の人になるのは、その時ね。だからね、いい子だから、聞いてくれる人がいないからって、私の所にお土産持ってこないで。

4月24日(金)

ゴールデンウィークを控え、そろそろ浮足だっていますね、皆さん。海外もよし、国内もよし。いろいろ予定があるわよね、ふつう。でも、私にはなんの予定もないのだ。去年の夏休みのようなことも、おととしのクリスマスのようなことも、まるでナシ。大事な独身の友達だって、男がいると思えば冷たいもんよ。うまくいっている時は、こっちが冷たいんだろうけどね。裏切り者だもんね。M君は、といえばアウトドア系で、遊びたいらしいんだけどなんの計画も示さないわけ。私と遊びたいんだったら、どこで何をして私を楽しませるか提示するべきでしょ。あんなに心配していた新人の教育係にもならなかったというのに、こっちはいきなり教育係よ。もう、めんどくさいぜ!!「あなたの知り合いに誰かいい人いないの?」って言ってみようかな。


(5月へ続く)