●1997.3月● 3月のハナ便り
3月5日(水)

 どこに行っても、たとえ誰に会っても、その時なにを着ていた としても、今の私にもう一度会いたいなんていう人は、広いこの 世の中探してもだれ一人としていないと思う。なぜって私、ひど い花粉症なんです。もう片時もハンカチやティッシュペーパーが 放せない。赤く腫れた目をしながら、ずっとハナをすすっていま す。はっきりいって、汚い。これが他人なら、近づきたくないほ ど。おまけに本人だって、好きでやっているわけじゃないのに、 だるくて眠い。打ち合わせでも、座っているのがやっとという状 態。外出するのにも、アメなめてマスクしていく。クライアント に行っても、世間話なんてする余裕さえない。

 今日なんて担当者の勝手な言い草で、空気が凍り付いている時 に派手にぶちかましてしまいました。担当者めがけて、しぶきが 飛び散りその場の空気を一瞬にして変えてしまいました。トホホ ホ。そしてクライアントからの帰り道、命名されたのがハクショ ン大魔王。あ〜あ、日一日と春が近づいているというのに、私の 春はまだ来ないのね。この姿、恋とは無縁の生活よ。そういえば、 もうKissの一つもずいぶんしてないな。

3月14日(金)

 期待してないといえば、ウソになる今日はホワイトデー。花粉 症の諸症状もなぜかおさまり、ご機嫌な私は約束の青山へと急ぎ ました。ところが、あのコたちが連れてきたのは先輩なんかでは なく、あろうことか後輩2人だったわけ。私たち3人は、顔合わせ した途端おもわず目配せをしてしまったではないか。今日は食事 だけで、お開きよのサインを。食事はおいしかったんだけど、和 食を26才と24才と一緒に食べてもね。大人の会話とは、ならない もんね。後輩を連れてくるところを見ても、あのコたちほんと慣 れているわ。やっぱりアパレルって、侮れないわ。

まあ、一応予定どおりに食事だけで、お開きにはなったんですけ れど……ところが新木場に住んでいるヤツに送ってもらうハメに なっちゃった。家が近かったから仕方がなかったのよ。ずっと当 たり障りのないことを話していたのに、家の近くまで来たらいき なり鞄からアロマオイルなんて出してくるのよ。こないだのお返 しなんだって。それで…あっ、そうそう初めてKissした時っ てこんな感じだっけ、なんてぼんやり思いだしていたら、その場 の雰囲気でそうなっちゃった。家に帰ってから、そのアロマオイ ルをみたらだんだんブルーな気分になってきた。別に、好みでも なんでもなかったんだし、向こうだってそうでしょ。あ〜、ちょ っと自己嫌悪。

3月25日(月)

 やっぱり私がお付き合いしているのは、花粉症だけ。あの日以 外はね。そして、今だに大魔王なんて呼ばれたりしています。で も4月からは、もう大魔王なんて言わせないんだから。今日、人 事異動が発表になって部長と部員の半分くらいが入れ替わること になったんです。私は、このまま変わらないんだけれどね。でも 7年目の会社生活が快適に過ごせるかどうか、今度の新しい部に かかっているんです。とりあえずレイアウト変えもあるから、引 っ越しがあるのよね。かったるい。春は、引っ越し業者がもうか る季節でもあるのね。


(4月へ続く)